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かつては、工場制手工業のことを「マニュファクチュア」と表記していましたが、教科書の表記からなくなったのはなぜですか。

 戦後の歴史観の中心であった「唯物史観」では、「産業革命」を経て近代社会に移行すると考えられており、「それでは日本の産業革命の萌芽はいつからか」ということが長く議論されてきました。その中で日本の工場制手工業がイギリスの「マニュファクチュア」にあたると考えられ、これにより日本がいち早く産業革命に成功したという考え方が有力でした。そのため、「工場制手工業(マニュファクチュア)」という表記を使用してきました。しかし、近年は「唯物史観」からの脱却が進められてきており、日本とイギリスを結びつけて考える必要性も薄れてきたことから、この用語が使われなくなりました。また、教科書では、イギリスの工場制手工業(マニュファクチュア)にはあまり触れる機会がないため、日本の工場制手工業の説明の際に、あえてその用語を使用する必要もないと考えております。高等学校の日本史・世界史教科書においても、イギリスの場合に限り「工場制手工業(マニュファクチュア)」とし、それ以外の工場制手工業は単に「工場制手工業」と表記することが一般的になっています。