中学校の先生方へ 法教育教材集

学習指導要領においては、「法に関する教育」の内容が盛り込まれており、新学習指導要領では更なる充実が求められています。平成21年に、中学校教員、弁護士が研究会を組織し、法教育の教材を作成しましたが、このたび、法令改正や学習評価の変更などを反映して、10年以上ぶりに改訂いたしました。
各教材とも、「指導案」「ワークシート」「弁護士からのアドバイス」「授業づくりのポイント」を掲載し、すぐに授業で実践しやすいように構成しています。
また、先生方が加工できるようWord形式でもご用意しています。生徒さんに身近な事例を元に、取り組める教材になっています。どうぞご活用ください。

教材一覧

以下にあるとおり、全部で20個の教材で構成しています。

学習指導要領 中学校公民的分野の項目

内容A 私たちと現代社会

(2)現代社会を捉える 枠組み

  • 01

    「法は⽇常の中にある」 〜⾝近なルールと法〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.21-22

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  • 02

    「バスケットボール部のルールを考えよう」 〜公正でよりよいルールとは〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.21-22

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  • 03

    「吹奏楽部の演奏⾳がうるさい! さあ、どうする?」〜対⽴と合意、司法の役割〜

    想定時間:2時間

    公民の教科書 p.21-22・p.87-88

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  • 04

    「グラウンド割り の決め⽅」 〜効率と公正〜

    想定時間:2時間

    公民の教科書 p.19-22

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  • 05

    「マンションをどこに建てる?」 〜街づくりを考えよう〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.17・p.23 地理の教科書 p.286-295

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内容B 私たちと経済

(1)市場の働きと経済

  • 06

    「ワンクリックで契約成⽴?」 〜契約の成⽴と消費者保護〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.121-124

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  • 07

    「“成績UP!” って書いてあったよ!」 〜契約における権利と義務〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.121-124

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  • 08

    「働く⼈の権利と義務」 〜労働契約について〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.137-140

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内容C 私たちと政治

(1)人間の尊重と日本国 憲法の基本的原則

  • 09

    「防犯カメラを設置するのか、しないのか?」 〜プライバシー、対⽴する利益〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.55

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  • 10

    「学級連絡網を作ってはいけないの?」 〜基本的⼈権、新しい⼈権 〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p41-42・p.55

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  • 11

    「外国⼈の⼊浴おことわり!?」 〜平等権、⼈種差別〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.45-48

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  • 12

    「中学校のホームページをつくろう」 〜表現の⾃由とプライバシーの権利〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.43・p.55

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  • 13

    「憲法第104条をつくろう」 〜憲法はなぜ最⾼法規なのか?〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.30

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  • 14

    「お⽝様は江⼾っ⼦よりエライ?」 〜⽣類憐みの令からみる法〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.29-32 歴史の教科書 p.124-125

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  • 15

    「御定書はだれのため?」 〜公事⽅御定書から考える法の意義と役割〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.29-32 歴史の教科書 p.134-135

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  • 16

    「憲法って何だろう?」 〜⾃由⺠権運動と⼤⽇本帝国憲法〜

    想定時間:2時間

    公民の教科書 p.35-36 歴史の教科書 p.148ー159

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(2) ⺠主政治と政治参加

  • 17

    「あいつにまかせておけば⼤丈夫?」 〜⺠主主義とは〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.67-68

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  • 18

    「罪と罰の重さって?」 〜刑事裁判について〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.87-90

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  • 19

    「交通事故にあった! 治療費はどうなる?」 〜責任の⼤きさと損害の公平な分担〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.87-88

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  • 20

    「お⾦はらってよ! だって、申し込んだじゃない?」
    〜⺠事裁判から学ぶ事実に基づく判断〜

    想定時間:1時間

    公民の教科書 p.87-90

    ※授業スライドPowerPointデータ・判決文PDFデータもダウンロードできます。

    Word PDF PowerPoint PDF
  • 03

    「吹奏楽部の演奏⾳がうるさい! さあ、どうする?」 〜対⽴と合意、司法の役割〜

    想定時間:2時間

    公民の教科書 p.21-22・p.87-88

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※ 「想定時間」はあくまで目安です。ワークシートなどは、この想定時間にあわせて作成しています。

※帝国書院公民教科書(令和3年度版)の対応ページの他、地理的分野や歴史的分野に関連する教材について、
帝国書院地理・歴史教科書(令和3年度版)の対応ページも掲載しています。

※教材No.③「吹奏楽部の練習音がうるさい! さあ、どうする?」は、該当する学習指導要領の項目が内容AとCの2つあります。

作成にあたって

作成した弁護士と中学校教員の代表の先生方より、作成にあたってのメッセージです。
先生方の思いが詰まっていますので、是非お読みください。

弁護士代表

村松 剛 先生

作成した弁護士を代表して

弁護士代表 村松 剛 先生

弁護士代表
村松 剛 先生

元 神奈川県弁護士会 副会長
現 日本弁護士会連合会 市民のための法教育委員会委員長
元 法務省 法教育推進協議会 委員(2008~2019年度)
著書 『中学生のための法教育11教材』 (東洋館出版 2018年)など多数

この教材集は、平成20年告示の学習指導要領に合わせて作成した初版を、同29年告示の学習指導要領に沿って改訂したものです。初版は、神奈川県内の中学校教員8名と弁護士9名が、数年間、作業部会と全体合宿を何度も何度も繰り返してようやく完成させました。

初版から10年以上が経過し、裁判官になった者、企業で勤務する者、東京の法律事務所に移転した者など、弁護士メンバーにもいろいろな変化がありました。そこで今回の改訂では、初版作成に関与した者のうち、青木康郎弁護士、田中敬介弁護士、種村求弁護士、そして私の4名で法律パートの検討を行いました。

今回の改訂作業を通じて、例えば、教材No.⑩「学級連絡網を作ってはいけないの?」は今の授業では利用することが難しいと思われるなど、ところどころで社会の変化を実感しました。しかしながら他方、学習指導要領が改訂されたとしても、資質・能力の育成を目指す学校教育に法教育が寄与できることを改めて認識することも出来ました。そのため、ワークシートはもちろんのこと、法的解説についても初版からの変更はほとんど必要ありませんでした。また、今日授業で利用しにくい教材についても、詳細な法的解説が参考になると思われることから、教材集として残しました。結局、今回の改訂は、この間の法令改正をフォローした点がほとんどでした。

この教材集には、次のような特徴があります。

① 生徒が関心を示す題材を提示し、原則1時間の授業で、法的な見方や考え方を学ぶことができます。

② 各教材の解説には「生徒に身につけさせたい法教育的な見方・考え方」を提示し、法教育としてのゴールを明示しました。

③ 解説の「弁護士からのアドバイス」では、先生方が授業する際の法的な視点を平易に解説するとともに、必要に応じて細かな法律知識を盛り込みました。

④ ワークシートはWordファイル等でも提供し、各学校の実情に応じて先生方が自由に変更できるようになっています。

この教材集は、気心の知れた教員と弁護士が自由な議論のもとに作成しましたので、解説は形式にとらわれない、熱い思いの詰まった内容になっています。私たちは、この教材集の作成を通じて、教育の専門家である教員と法律の専門家である弁護士が協働することにより、より深い学びに寄与する教材ができることを強く実感しました。この教材集には、そのエッセンスが凝縮されています。是非、多くの先生方にご活用いただければ幸いです。

令和4年12月

教員代表

鈴木 浩 先生

作成した教員を代表して

教員代表
鈴木 浩 先生

横浜市立新井中学校 副校長(令和4年度時点)

主体的」に法教育に取り組める教材集を作りました

主体的・対話的で深い学び」「主体的に学習に取り組む態度」などと、今、学校の学習では、「主体的」ということばが多く使用されます。主体とは、「自らが何事かに関わって、その対象を変える」ということです。変えられる対象が客体です。社会科では、社会が学習対象ですから、学習者である生徒が、社会について学び、それをよりよくしようと関わっていくことこそが、主体的な態度といえるのです。
 法教育は、そういう意味において、とても主体的な学習に適した内容です。そのことは、ここに示した20の教材を見ていただければ、よく分かると思います。
 この教材集は、「1時間でできる」を基本コンセプトに作ってきました(中にはどうしても2時間かかってしまうものもできてしまいました)。3観点となった観点別評価を具体的に示すなど、現場のニーズにあったものを提供したつもりです。そして、それぞれのワークシートには、弁護士からのアドバイスと、教師からの授業づくりのポイントを付けていますので、明日からでもすぐに授業で使っていただけるようになっています。

教材の構成に工夫をしました

まずは、指導案に工夫をしています。一般的な指導案と少し違っています。「授業のねらい」に続けて、「生徒に身につけさせたい法教育的な見方・考え方」を入れました。ここでは、社会科の学習内容を「法教育」として扱うとどうなるか?ということを書いています。この部分だけを読んでいただいても、法教育の参考書として活用できます。
 次に、「ワークシート」ですが、すべてに「事例」を掲載しました。教師と弁護士が、何時間も議論して練り上げた教材ですので、多くの方に活用して欲しいと思います。ワークシートには、知識の習得をねらった部分も少し入れ込んであります。ワークシートについては、それぞれの学校で実態に合わせて作り替えていただけるようになっています。
 「弁護士からのアドバイス」は、法的な知識や考え方などに自信がもてず、なかなか「法教育」に踏み込めないでいる先生方に、きっと役立つはずです。その上で、さらに、教師が「授業づくりのポイント」を書きました。実際の授業で、きっとこのあたりが難しいだろうと思われる部分について、教師たちが話し合って、アドバイスの形で示してみました。実際にワークに取り組むときに、使っていただければよいと思います。
 それぞれのタイトルにも工夫をしています。なるべく「生徒からの疑問」の形でタイトルを付しました。ワークシートに取り組むことで、その疑問が解けるようになっていると思います。

歴史や地理の事例も作りました

ここで提供するワークシートは、「法教育」というカテゴリーにこだわらず、広く社会科の授業のプリントとして使うことも可能です。一つでも二つでもよいので、まず、教室で配ってください。宿題にしても良いと思います。家庭学習やレポートにも適しています。
 それと、この企画のもう一つの目玉は、地理的分野、歴史的分野にも範囲を広げた点にあります。社会科の教科構造を考えれば、地理、歴史でも法的なものの考え方を身に付ける必要があるし、小学校での取組みをつなぐ上でも、中学1、2年次での学習も大切だと考えたからです。もちろん、法的なものの見方・考え方は、主に公民的分野で培うのが基本ですから、内容的には、公民的分野の中で、地理的分野・歴史的分野を振り返りながら実施するという使い方が一般的かと思われますので、そういう形にはしています。分野を超えた社会科としての総合的な課題ととらえていただいても結構です。
 まずは、ダウンロードして、とにかくプリントを生徒たちに渡してみてください。きっと目を輝かせて取り組んでくれると思います。

 この教材集は、教科書会社のホームページに掲載されます。ですから、保護者の方、生徒、あるいは、一般の方も見ることが可能です。さまざまな状況で、自宅で学習せざるを得ないこともあるでしょう。あるいは、学校での授業にとどまらず、もっと発展的に学習したいということもあるでしょう。そういう時に、「ひとりで学べる教材」ということも意識していますので、多くの方にチャレンジしていただきたいと思います。そして、ぜひ、多くのご意見をください。そこから、私たちも、もっとよい教材集をめざして、磨きをかけていきたいのです。

令和4年12月

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