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鎌倉時代と室町時代とで、産業の内容をわけずにまとめているのは何か意図があるのですか。

 弊社の教科書が、鎌倉時代と室町時代の産業を、両時代で分けずにひとまとめにして扱っている理由は、鎌倉時代と室町時代の産業構造において見られる類似性と連続性の強さにあります。例えば、農業の発達を見てみますと、鎌倉時代に畿内の一部で行われ始めた二毛作が、室町時代には西日本を中心に広がっていくことがあります。施肥についても、鎌倉時代には草木灰中心だったものが、室町時代になると、より養分が豊富な人や家畜の糞なども使用され始めて多様化していきますし、灌漑技術においても、鎌倉時代に登場した水車が、室町時代になると、その利便性ゆえに広く普及していきます。このような両時代にまたがる類似性や連続性は、農業面においてのみならず、貨幣の流通、定期市の発達、運送業者の活躍、手工業の発達など、商業面や工業面においても、共通して見られることから、鎌倉時代と室町時代を含むこの時期の産業については、2つの時代に分割してとらえるのではなく、一連の流れとして、ひとまとまりでとらえるべき内容と判断しております。

 さらに、現行学習指導要領においては、古代・中世・近世・近代・現代という、より大きな時代のくくりで各時代の特色をとらえることが歴史的分野の学習目標として掲げられております。上記の学術的側面に加え、この学習指導要領における学習目標の指針も踏まえまして、教科書におきましては、中世の産業のようすの全貌とその特色について、より適切かつスムーズに理解していただけるよう、鎌倉時代と室町時代とに分けずに、まとめて扱わせていただいている次第です。また、分割して扱うことで生じる内容の重複を防ぎ、先生方のご指導や生徒の皆様の学習上の煩雑さを排除することも意図しております。