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<フォーカス 地歴・公民科のお仕事> 学芸員

2026年度 後期号

◆フォーカス 地歴・公民科のお仕事

歴史に関する知識・情報を提供するサービス業

学芸員

今回は、博物館や美術館などで働く「学芸員」のお仕事にフォーカス。2023年にグランドオープンし、徳川家康や今川氏ゆかりの品々を展示、静岡の歴史・文化を発信する静岡市歴史博物館にお伺いし、学芸員の業務と、仕事につながった学びはどのようなものかお聞きしました。

お話を伺った方
静岡市歴史博物館 学芸課 主任 鈴木 将典さん
専門:今川・武田・徳川を中心に静岡を治めていた戦国大名の研究/古文書研究

駿府城が見える博物館3階展望ラウンジにて。学芸員の鈴木将典さん。

学芸員は、文化庁が認定する国家資格をもつ専門職員。静岡の歴史に関する専門家として、主に次の3つの役割を担っています。

① 静岡にまつわる史料の収集、整理、調査、研究

徳川家康や今川氏に関する史料を、他の博物館の図録などで調べたり、全国の古書店や古美術店を訪れたりして収集します。静岡の寺、個人が所有する史料についても展示するために預かることもあります。それらの史料は収蔵庫で整理保存します。史料を購入する時は、本物かそうでないかを判断する必要があります。自身の経験だけでなく、専門家、有識者の意見を参考にすることもあります。鈴木さんは、見分ける力を付けるために、学生の時から古文書調査をしたり、博物館の展示を見たりして、目利きの力を磨いてきました。

また、静岡市歴史博物館では研究紀要を発行しており、所属する学芸員の論文や調査報告などを収録し、発信しています。一方、博物館業務と直接関わらない自分の専門の研究や自主的な勉強も時間を見つけて継続的に行っています。

② 展示づくり

静岡市歴史博物館では、7人の学芸員がそれぞれコーナーを担当する基本展示と、年4回の企画展示を行っています。企画展示の準備は、開催の1年以上前からスタート。年代順ではなくテーマごとに章立てを作り、その説明の根拠となる史料を展示するため、所蔵者に交渉して史料の調査をさせてもらったり、他の学芸員と相談したりして全体を決めていきます。展示方針として、何年にどのような出来事があったかではなく、例えば徳川家康が何歳の時に何をしたかを伝えることとしています。来館者が、その年齢の時に自分は何をしていたか、自分ごととして見られるようにすることで、自分と照らし合わせながら人物を捉えられるように工夫しています。

③ 地域や社会に伝える教育普及活動

静岡の歴史に関する知識や史料を、子どもから大人まで幅広い人たちに分かりやすく伝えることも大きな役割の一つです。中学生の職場体験の対応や大学生が学芸員免許を取得するための博物館実習の指導、週末のトークイベント、地元の生涯学習センターでの出前講座、図書室「家康公研究室」でのレファレンス対応など、そのための活動は多岐にわたります。

企画展示の期間は、展示解説、学芸員マニアックトーク、講演会、学芸員ガイドツアーなどのさまざまな関連イベントも行います。来館者の多くは、歴史に関する知識や情報を得たくてやって来ます。その中には、研究のために来館する研究者もいれば、海外からの観光客もいます。学芸員は、静岡の歴史全般を知っているプロとして、その時々で変わる来館者の求める情報を分かりやすく提供し、発信していく必要があります。

古文書を見分ける時は、筆使い、花押、活字の形などに着目して判断している。

企画展示「没後五〇〇年 戦国大名今川氏親」の講演会の様子。鈴木さんは担当学芸員としてトークセッションに参加し、聴講者は230名を超える盛況ぶりだった。

鈴木さんが担当した「家康日めくりカレンダー」。その日、何歳の家康が何をしていたかが記載されている。

 ① トークイベント 
専門的なことに踏み込んだ90分の「学芸員マニアックトーク」。初心者向けの「わかりやすい歴史・地域のおはなし(60分)」と合わせて人気のイベントなので、しっかり準備をして臨む。

 ② 家康公研究室での来館者レファレンス対応  
家康公研究室では、静岡に関する研究の専門図書や学芸員の研究成果などの貴重な資料を閲覧できる。学芸員は、来館者・研究者からの質問に回答したり、調査の支援を行ったりしている。

 ③ 企画展準備 
他の学芸員と協力して企画の設営作業をしたり、パソコンで企画展図録・パネルの原稿執筆を行う。締め切りがあるので、企画展の開催日が近づくにつれて忙しくなっていく。

interview

鈴木 将典さん
博物館開館に向けて準備段階から関わる。父親が歴史好きで、小さな頃から城や史跡巡りをし、ゲームや大河ドラマなどをきっかけに歴史にハマる。大学の歴史学科で研究や戦国時代のおもしろさに目覚め、大学院生の時に地元の博物館で働き始めたことから、学芸員の道へ。


学芸員は人を相手にする仕事

学芸員は物を相手にする仕事だと思って選びましたが、実際は、人を相手にする仕事です。お客さんに分かりやすく情報を伝えることだけでなく、史料の関係者に所蔵品の借用交渉をするなど、コミュニケーションをとっていくことも大事です。歴史が好きで、歴史に関わる仕事がしたいと思っていたので、夢が実現できたのは幸せなことです。

お客さんから良かったと言ってもらえたり、SNSで話題になったりするとうれしいですね。また、私が専門とする戦国時代の場合、史料が新しく見つかるということがよくあります。他の時代に比べるとほどほどに見つかる。だから一番おもしろいです。ただし、その分大変ですよ。他の専門家の研究を勉強したり自分の研究を進めたり、常に最新の知識をアップデートし、展示に反映させていかなければならないので日々勉強です。

歴史は物語として考えていくもの

実は、今の仕事に一番役立った高校の教科は国語の漢文です。古文書は漢文で書かれているので、読める必要があるからです。いろいろなことを知っておかなくてはならないので、社会科だけでなく国語や算数などの基礎科目のほか、コミュニケーション能力も必要です。

歴史の勉強は暗記だと言われてきましたが、物語として考えていくものだと思います。だから当館では、あまり年号を使っていません。その人物の人生や出来事、自分が生まれ住んでいる所がどういう歴史をたどってきたのかといった話を中心にしていくと、自分ごととして捉えられます。

学校教育に期待すること

高校の勉強は大学の授業についていくための基礎知識を身に付ける場だと思います。大学の学芸員養成課程の授業でたたき込まれたことなど、学生の時に学んだことは、その当時は気付かなくても学芸員になって振り返ると身に付いていますね。

勉強はできなくても自分の好きなことは自然に覚えられるものです。それが私の場合はたまたま歴史だった。好きなことを突き詰めていって今ここにいます。自分は何ができるのか、早いうちに知っておくと、将来、自分が何になりたいかをイメージしやすくなります。歴史学の世界は、天才級のすごい人がたくさんいます。そこで生き残っていくためには、自分の得意分野を作り、そこを伸ばすこと。このテーマなら自分が一番知っているというものを持つことが必要です。

 鈴木さんが印象に残っている展示物
博物館建設前に発見され、発掘された状態のまま露出展示されている「戦国時代末期の道と石垣の遺構」は、駿府城の石垣と同じ野面積みの貴重な事例。しかし、展示室の設計ができてしまった後の発見だったため、設計のやり直しにつながる大変な出来事だったそうです。


 静岡市歴史博物館
静岡県静岡市葵区追手町4-16 TEL 054-204-1005 開館時間 9:00〜18:00 https://scmh.jp/