- 中学校 地理
<授業研究 地理> 知識構成型ジグソー法を用いた「関東地方」の学習 ―「消滅可能性自治体」資料から考える授業設計―
2026年度 後期号
◆授業研究 地理
知識構成型ジグソー法を用いた「関東地方」の学習
-「消滅可能性自治体」資料から考える授業設計ー
群馬県 高崎市立矢中中学校 教諭 梅村 唯斗
1 はじめに
次期学習指導要領の作成に向けた報告書が令和7年9月に、「論点整理」として文部科学省教育課程企画特別部会より出された。そこでは、現行学習指導要領と大きく方向性を変えることなく、現在と同様に主体的・対話的で深い学びの実装が強調されている。本稿では、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業実践として、「単元を貫く課題の設定方法」と「課題追究の方法」に注目した実践を紹介する。
2 学習の流れ
今回は、帝国書院『社会科 中学生の地理』(以下、教科書)p.233~248 第3部第3章第5節日本の諸地域「関東地方」での授業実践を紹介する。単元指導計画は以下の通り6時間での構成とした。
1時間目では、単元を貫く課題「人口の移動によって起こる関東地方の問題とはどのような問題で、どのような解決策が考えられるのか」を設定する。2時間目と3時間目では、なぜ関東地方に人口が集中するのか、その理由を「自然環境」「首都機能」から考察する。4時間目から6時間目にかけては、関東地方で人口が集中することにより起きている問題とその解決策を、「生活面」「農業面」「工業面」から捉えていく。その際、知識構成型ジグソー法を活用して、問題と解決策を捉えていき、そのまま、単元を貫く課題を解決していく。
3 工夫①「単元を貫く課題の設定方法」
本単元での第1時に当たる部分である。単元を貫く課題の設定については、どの学校でもその設定方法に苦慮されていることかと思うが、主体的・対話的で深い学びの実現には、生徒が自ら学習課題をたて、学習を進めていくことが欠かせない。本実践では「生徒が「なぜ?」と思いたくなる資料の提示」、「生徒の自然な思考過程に沿った課題の設定」の2点に着目して、授業計画をたてた。
まず、「生徒が「なぜ?」と思いたくなる資料の提示」については、「消滅可能性自治体マップ」を活用した。「消滅可能性自治体」とは、2023年から2025年にかけて設置された有識者でつくる民間研究機関「人口戦略会議」(三村明夫議長)によって公表された(図1)。9つの分類に基づく地方自治体の持続可能性についての情報を朝日新聞社が独自にマップにしてまとめたものが図2である。
図2を参考にすると、関東地方の地方自治体の中にも、消滅可能性が高い自治体と低い自治体がともに分布していることが分かる。筆者が勤務している高崎市を含め、関東地方にこのように消滅可能性自治体が広がっていることは生徒の素朴な疑問を生み出すのに有効なのではないかと思い、活用した。
次に「生徒の自然な思考過程に沿った課題の設定」についてである。本校生徒の実態に合わせて、以下のような問いの流れで、生徒の地理的な見方・考え方を働かせつつ、生徒が自ら課題を設定できるように発問を計画した。
(消滅可能性自治体マップについて説明したのち)
先生「消滅可能性が高い自治体と低い自治体はそれぞれどのような場所に広がっていると思いますか?」
生徒「(消滅可能性が)高い自治体は関東地方の地方部に、低い自治体は関東地方の中心部に広がっていると思います。」
先生「では、なぜこのような違いが生じてしまうのだと思いますか?」
生徒「地方部から中心部にかけて人口が移動してしまうからだと思います。」
先生「では、ここまでの流れについての自分の疑問点をいくつかあげてみよう。」
生徒「なぜ地方部から中心部へと人口が移動するのか?」「人口が移動することで起こる問題とはどのような問題か?」
先生「では、今出た疑問点を踏まえて、自分なりの単元を貫く課題を設定してみよう。」
以上のような流れで、単元を貫く課題を設定していく。学校の実情に応じて、学習形態を工夫したり、追加で資料を提示したりしてもよい。大切なのは、自分が住んでいる地域で、中心部と地方部に人口の面で大きな違いがあり、その違いから問題が起こっている可能性があることに生徒が気づけるかどうかである。そのための資料として今回は消滅可能性自治体マップを活用し、単元を貫く課題の設定を構想した。
4 工夫②「課題追究の方法」
本単元の第4時から第6時に当たる部分である。この3時間を、知識構成型ジグソー法を活用して、生徒一人一人が単元を貫く課題に対する自分なりの答えを導き出せるように進めていく。
知識構成型ジグソー法は大きく「①課題把握」、「②エキスパート活動」、「③ジグソー活動」、「④クロストーク」、「⑤個人で課題解決」という流れをとるが、今回は、①・②を第4時で行い、③~⑤を第5時、第6時に行うという流れで授業を計画した。それぞれの場面での活動について、詳しく説明していきたい。
まず第4時だが、ここでは、単元を貫く課題を解決していくために関東地方のさまざまな面で起こっている問題とその解決策について考察していく。「①課題把握」では、今までの「日本の諸地域」の学習を振り返り、地域の問題を捉えるためにはどのような面に注目するとよかったかと発問し、さまざまな面から地域の問題点を見ていくことを確認する。
「②エキスパート活動」では、関東地方の問題点と解決策を生活面・農業面・工業面に分けて、考察を進めていく。紙面の都合上、ここでは生活面のワークシートのみを掲載している(図3)。ワークシートには、左側に問題を読み取るための資料を添付し、右側に「それぞれの資料からどのようなことが読み取れるか?」、「資料からどのような問題点が読み取れるか?」、「その問題はどのような理由により起こるのか?」、「その問題の解決策はどのようなものが考えられるか?」という問いを設定している。この4つを問いに設定した理由は、解決策を考える際に、原因を明確にしながら考えられるようにしたかったからである。ただ解決策を調べるだけの活動にすることなく、根拠に基づいた提案を目指したい。
第5時から第6時にかけては、もう一つのワークシートを用いる(図4)。ここでは、ワークシートの左側を使って「③ジグソー活動」を行い、右側を使って、その後の「④クロストーク」、「⑤個人で課題解決」を行えるようにしている。前半のジグソー活動では、前時で行ったエキスパート活動からどのような共通点が考えられるかを表にまとめていく。この活動を通して、各班で自分たちなりの単元を貫く課題に対する答えを考えさせていく。
後半のクロストークの時間では、生徒が各班で考えた単元を貫く課題に対する答えを発表していく。発表内容に応じて、生徒に適宜質問する場面を設けたり、教師が発表内容をさらに深く考える発問をする場面を設けたりする。聞く側の生徒は、学習プリントの「各班の発表で気づいたこと」の欄に、自分たちの班とは異なる視点から考え出された意見や、自分がこの後、単元を貫く課題に対する答えを書くときに活用できそうな意見を中心に記述していく。
最後の個人での課題解決の時間では、ここまでの学習を踏まえたうえで、自分なりの単元を貫く課題に対する答えを記述していく。
知識構成型ジグソー法は、エキスパート資料の作成に教師の力量が試されるといわれるが、授業のねらいや生徒の実態に応じて、教科書や地図帳の資料のみでも作成は十分に可能であり、その資料に基づいて、深い学びを行うことも十分に可能であると筆者は考える。
5 おわりに
現行学習指導要領で初めて記載された「主体的・対話的で深い学び」という語が登場して、すでに約10年が経とうとしているが、その学びを実現させられていると自信をもって答えられる教師がいったいどれほどいるだろうか?筆者も手探りの状態で、あの手この手を尽くしている状況である。
しかし授業中に、普段社会科に関心を示さない生徒がふと「分かった!」という表情を見せる瞬間がある。自分なりに課題意識をもって授業に取り組み、課題追究のため、さまざまな資料を読み取ったり、他者と意見を交換したりし、見方・考え方を働かせつつ、学んできたことをつなげて、課題解決へと自分の力で向かうことができたときに、生徒はそういった表情を見せるのであろう。これからもそういった生徒の表情が見られるような授業設計を心がけていきたい。





