- 高等学校 地理
<地図帳活用コトハジメ> 地図帳から読み解く インドの経済成長と他国との結びつき
2026年度 後期号
◆地図帳活用コトハジメ 「地理総合」での地図帳の活用法
第9回 『高等学校 新地理総合』
「生活文化の多様性と国際理解」での地図帳活用
地図帳から読み解く
インドの経済成長と他国との結びつき

大阪桐蔭中学校高等学校 新井 優希
■インドにおけるICT産業
『新詳高等地図』(以下、地図帳)p.32 1 a「人口と1人あたり国内総生産」( 図1 )より、インドでは1人あたり国内総生産の伸びが大きいことが分かる。グラフ内にも書いてある通り、これは労働力の増加のみならず、1991年における経済の自由化、ソフトウェアテクノロジーパーク設立などが要因であることがうかがえる。かつてのインドは、旧ソ連との関わりが強く社会主義的な経済が主であった。しかし、旧ソ連の経済成長の鈍化や外貨危機を背景に、外国資本に対する規制を撤廃した。『高等学校 新地理総合』(以下、教科書)p.94の「ICT産業の発展」にも記載の通り、インドでは憲法によってカーストに基づく差別は禁止されているが、いまだにインドの社会におけるカースト差別は根深く残っている。しかし、ICT産業はカースト制度に縛られない職業として、インド社会に大きな影響を与えることとなった。
図1 『新詳高等地図』p.32 1「インドの鉱工業と産業」 a 「人口と1人あたり国内総生産」 b 「鉱工業の分布」 c 「1人あたり州内純生産と州別工業生産額」
授業ではこう使う!
インドにおける鉱工業の分布と1人あたり州内純生産を比べることで、州の経済水準と鉱工業の関係を読み解く。1人あたり州内純生産が高い州ほど、重化学工業やICT産業が盛んな都市が多い。

■インドとアメリカ合衆国との結びつき
先述のICT産業について、地図帳p.92 2 の「世界経済の動きとアメリカ合衆国」( 図2 )より、アメリカ合衆国に本拠地を置くG(Google)社のオフィスがインドに複数見られることが分かる。G(Google)社のオフィスの多くは、1人あたりGNIの高いヨーロッパや日本を中心とした先進国に見られるのに対して、インドの1人あたりGNIは5000ドル未満(2023年)である。これは、教科書p.94の「ICT産業の発展」に記載の通り、インドはイギリスの植民地支配を受けていた歴史があり、現在も英語がビジネスや教育の場で広く使われていることで、アメリカ合衆国やヨーロッパなどの企業とのやりとりをスムーズに行うことができるためである。
図2 『新詳高等地図』p.92 2「世界経済の動きとアメリカ合衆国」
また、インドは数学など理数教育のレベルが高く、過去にも多くの優秀なエンジニアを輩出してきた。そのような高度な技術を持った優秀な人材に恵まれていることも理由の一つである。さらに、アメリカ合衆国と約半日分の時差があるため、24時間体制で効率的に開発やサポートを行うことができる強みも持っている。
■インドと西アジアとの結びつき
教科書p.95のコラム「世界で活躍するインド系移民」では過去に見られたインド系移民の歴史や、近年のインドから先進国へのICT技術者の移動について学ぶことができる。ここでは、1970年代以降西アジアへの出稼ぎ労働者が増加したことが記載されているが、地図帳p.38⑤の「労働者の結びつき」( 図3 )からは、アラブ首長国連邦やサウジアラビアからインドへの外国人労働者の送金額が高いことが分かり、近年のインドと西アジアとの強い結びつきを読み取ることができる。
図3 『新詳高等地図』p.38 ⑤「労働者の結びつき」
授業ではこう使う!
「世界経済の動きとアメリカ合衆国」の主題図から、インド・中国・日本とアメリカ合衆国との関係を比べる。インドは、理数教育が充実しており、人件費が安く英語が広く使われ、またアメリカ合衆国との時差が約半日であることから、アメリカ合衆国に本拠地を置くG(Google)社のオフィス数が多いことが分かる。次に「労働者の結びつき」の主題図から、インドと西アジアの国々との関係を比べる。「アラブ首長国連邦」「オマーン」「クウェート」「サウジアラビア」の国名に印を付け、インドに比べて賃金の高い西アジアの国々へインドの出稼ぎ労働者が移動していることを読み取る。これらの国々は近年石油収入を背景に建設業やサービス業が発達しており、外国人労働者の需要が高い。

■インドの経済成長による課題
目覚ましい経済成長の最中にあるインドだが、教科書p.95の「農業への影響と残された課題」に記載の通り、国内の経済格差が問題となっている。地図帳p.32 1 b の「鉱工業の分布」とp.32 1 c の「1人あたり州内純生産と州別工業生産額」( 図1 )を見比べると分かる通り、ICT産業が盛んな都市や、重化学工業が盛んな都市がある州は1人あたり州内純生産が高い傾向が見られる。また、そういった地域へ農村から労働力が流入することで、都市にはスラムができるなどの課題が発生している。



