- 小学校 ICT活用
<コトハジメの事始め> デジタル地図帳の未来や可能性
2024年度 前期・特別号
デジタル地図帳の未来や可能性
北陸学院大学 教育学部 初等中等教育学科 教授 村井 万寿夫
「気づき」が生まれやすくなる
デジタル教材には、デジタルならではの効果があるとの報告が、学校現場の先生から、そして、私が有識者会議の委員を務めていた文部科学省実証研究事業からも届いています。社会科の学習においてはこれまで紙の教科書や地図帳、資料集が用いられてきましたが、デジタル教科書やデジタル地図帳を用いることで、社会的事象の見方・考え方をより広めたり深めたりすることができるのです。例えば、デジタル教科書であれば、資料(写真、イラスト、グラフなど)を拡大することで細部まで見ることができ、子どもたちに新たな「気づき」が生まれやすくなります。そして、気づいたことをペンや指先で簡単にメモすることができます(
)。

※画像は平成27年度版『新編 新しい社会3・4上』東京書籍、p.51~53より(イラスト 間瀬 なおかた)
話し合いが活性化する
その結果、子どもたちの気づきも多様になります。多様になるのは拡大して見る所が子どもたちによって異なるからです。
また、気づいたそのときにメモを簡単にできるので、学びの「足あと」を残しやすくなります。これによって伝え合う必要性が生まれ、話し合いが活発になります(
)。
紙の地図帳のよさと課題
紙の地図帳には国名や地域名、河川や山岳の名称、建物や土地の様子、陸の高さや土地利用の様子など、地図記号を中心に多様な情報が網羅されています。よって、例えば、47都道府県名とその県庁所在地などを探したり、鉄道や高速道路、川や山などを探したりする場合には、地図帳の同じ場所(同じページ)を用いることになります。いわば、小学校用の紙の地図帳の場合には、第3学年から第6学年までを通して使えるよさがあるといえます。
このよさがある一方で、地図帳を「見る目」や「読み取る目」が十分に育っていないと、地図帳で「見つける力」や地図帳を使って「考える力」に連動しないともいえます。もともと人間には見たい所だけを見る力、焦点化する力がありますが、特に小学校中学年の場合、先生が子どもたちに見てほしい所を全員が見ているかどうか分からないことがあります。
デジタル地図帳で見たい所だけを見る
そこで、デジタル地図帳を使えば、拡大して見ることで焦点化したり、「レイヤー切り替え」を使って見たい所だけ(例えば、都道府県名と県庁所在地)を見たりすることができます(
)
このレイヤー切り替えは特にデジタル地図帳ならではの機能で、その学習効果はとても高いといえます。
実際、文部科学省実証研究において、中学校第2 学年の地理でレイヤー切り替えを使った学習が行われ、その効果が実証されています(
)。
デジタル地図帳で社会科の学びが変わる
紙の地図帳の活用頻度はこれまで高くなかったと感じています。けれど、前述したようにデジタル地図帳は、学習課題や子どもたちの学習状況に応じてさまざまな使い方ができます。このことは受け身の学びでなく、能動的な学びを具体化する手立てになるといえます。
私は大学で教員志望の学生指導にあたっています。「教育の方法・技術」の科目で<系統学習>と<問題解決学習>の2つの学習方法について調べたあと、学生自身が小中学生だったころの社会科の授業のイメージはどちらにあてはまるか答えてもらいました。その結果が下の
です。
この結果から社会科の授業は、「先生が教える」「知識を覚える」といったイメージが強く、「自ら学ぶ」「調べ考える」といったイメージが弱いことが分かります。この授業観を変えることが必要です。その手立てになるのがデジタル地図帳です。デジタル地図帳を使って自ら調べ考え、それを伝え合い、話し合うことで、能動的な学びへと変わっていきます。
「調べやすい」ことが「分かる」学びにつながる
デジタル地図帳は、国名や地域名、河川や山岳の名称、建物や土地の様子、陸の高さや土地利用の様子など、さまざまな事柄を調べやすいという特長があります。調べやすいということは、気づきが生まれやすくなります。気づきは学習展開上の大事な観点となるので、子どもたち一人一人が気づきを持てるようにしたいものです。デジタル地図帳はそのための手立てになります。
気づいたことを出し合うことで「そうかぁ」とか「ほんとだ!」など、子どもどうしで分かり合う学びになります。自分では気づかなかったことも、友だちの気づきによって分かるようになるよさがあります。
まだまだある! デジタル地図帳のよさ
デジタル地図帳のよさは、まだまだあります。本冊子では、日本の社会科学習をリードする7 名の先生がそれぞれにデジタル地図帳のよさについて紹介してくれています。





