- 小学校 6年
なるほど!授業実践 6年生 ~地図帳で「明治日本の産業革命遺産」を探してみよう~
2026年度 後期号
◆なるほど!授業実践 6年生
地図帳で「明治日本の産業革命遺産」を探してみよう
鹿児島県 鹿児島市立向陽小学校 教諭 西原真琴
学習指導要領との関連
(2)「我が国の歴史上の主な事象」での活用
明治の産業革命遺産を地図で確認することで、産業革命が日本の「どこ」で起こったのか、現在とどうつながっているのか空間的な広がりの中で捉え直すことができます。
ここで掲載している地図帳は、平成31年検定済『楽しく学ぶ 小学生の地図帳』です。
問い
日本の近代化の舞台である「明治日本の産業革命遺産」は、どの地方に多く見られるのだろうか。
単元「明治の国づくりを進めた人々」で地図帳を使ってみよう
「明治の国づくりを進めた人々」の単元では、富国強兵や殖産興業といった明治政府の改革を学び、日本の近代化を理解させます。しかし、改革を文字だけで追うと児童は実感を伴いにくいものです。そこで有効なのが、地図帳の活用です。改革が「どこ」で行われ、現代にどうつながっているかを視覚的に捉えさせることで、歴史を自分事として捉える主体的な学びが始まります。
「明治日本の産業革命遺産」はどこに多く集まっている?
授業では、殖産興業の具体例として、各地に残る世界文化遺産の「明治日本の産業革命遺産」を取り上げます。まず地図帳p.15の凡例から「世界文化遺産」の記号を確認させ、全国から探す活動を行います。
見つけるのが難しい児童には、「岩手県の釜石や静岡県の伊豆半島を見てごらん」と具体的な地域を指して声をかけます。ピントが合ってきたらペアで教え合わせることで、意欲的に探し出せます。
遺産の点在に気付かせた後、「特にどこに集まっている?」と問いかけると、児童は九州地方への集中に驚くはずです。すかさず九州のページ(p.33〜34)を開かせ、例えば鹿児島市の「旧集成館ほか」の文字と記号を自分の指で押さえさせます。
確認の際に効果的なのがデジタル地図帳のレイヤー機能です。国道や都市名など不要な背景情報を隠し、世界遺産のマークだけを浮き立たせます(上記参照)。さらにデジタル地図帳で各地方のページを開き、ペン機能で産業革命遺産(釜石、韮山、九州各地)を囲んで焦点化することで、遺産の偏りや分布の傾向をすべての児童が直感的に捉えられます。
※令和5年度検定済『楽しく学ぶ 小学生の地図帳』p.127では日本全体の世界遺産の地図を用意している。
歴史学習で地図帳を活用する意義
九州のなかでも、鹿児島市にある「旧集成館」に着目します。ここには大砲を造る反射炉や紡績工場が集中していました。集成館事業は近代産業の苗床であり、ここで育った日本人技術者たちが、のちに富岡製糸場など全国の官営工場へと派遣されて指導的役割を果たしました(元尚古集成館館長・松尾千歳氏の考証による)。ここで歴史的史実(過去)を整理した後、授業のラスト5分で教師がこう問いかけます。「では、この明治時代の工場や高い技術は、役目を終えてただ壊されて終わりだったのかな? なぜ、今私たちが持っている“現代の地図帳”に、わざわざ世界遺産マークで載っているのだろう?」。この問いかけが、児童の思考を過去から現代へとジャンプさせます。「今の日本の優れた工業や、ものづくりの始まりだからだ」「今も大切なものとして残されているからだ」と、児童は現代へのつながりを自分の言葉で語り始めます。
歴史学習において地図帳を活用する意義は、過去の歴史的事象を「空間的な広がり」のなかで捉え直せる点にあります。日本が近代国家を目指して歩みを進めたダイナミズムを、地域間のつながりや空間の軸を通して実感させることができるのです。




