• 小学校 6年

【付録解説】地図を見比べて考えよう! ~江戸と東京、「空間と時間」をつなぐ深い学び~

2026年度 後期号

◆付録解説

地図を見比べて考えよう!
~江戸と東京、「空間と時間」をつなぐ深い学び~

創価大学文学部 教授 髙橋洋子

地図は、記号化や総描といった手法を用いて3Dの情報を平面に表現したもので、位置や分布、土地の様子などの空間情報を把握することができます。歴史の学習では、新旧の地図を「見比べ、重ね合わせる」という活用の工夫を加えることで、子どもたちは事象を時間軸に位置付けて捉えられるようになり、主体的な深い学びへと向かいます。

今号の付録『江戸と東京』は、見比べ、重ね合わせて考えるための地図ポスターです。6年生の歴史学習にとどまらず、ぜひ全ての教室で大いに活用してください。

2026年度後期号の付録『江戸と東京』

ポスター右上のイラスト スパロウ先生(地図帳の使い方を紹介するキャラクター)が、私たちのくらしのなかに「今も残っているものを探してみよう!」と語りかけています。子どもたちは江戸と東京の地図を見比べて、イラストから、花見や花火、相撲、歌舞伎といった伝統文化を次々と見出していくことでしょう。身近なエンターテインメントのルーツが江戸時代にあることを直感的に捉えさせ、主体的な探究へと導く、スパロウ先生の巧みな授業デザインです。

また、江戸の地図では「郊外から江戸へ野菜を売りに来たよ。」と、御城から見て北西の方角からやって来た農民がつぶやいています。しかし、郊外から都市へ、物資が一方通行だったわけではありません。都市からは下肥(しもごえ)が運び出され、近郊の畑での野菜作りに活用されていました(図1)。

図1 地図帳p.70 リサイクルが進んでいた江戸の商売

図1 地図帳p.70 リサイクルが進んでいた江戸の商売

さらに、この循環は陸上だけにとどまりません。その栄養は川へと流れ込み、さらに分解されながら運ばれて江戸前の海を豊かに育み、食物連鎖を通じて魚介を養っていました。ここで育った江戸前アナゴや芝エビ、スズキにキスなどが、江戸っ子に旬の味を提供していたわけです(図2)。資材や道具のリサイクルだけではない、自然の生態系と見事に調和した高度な物質循環が、当時の江戸では機能していました。

図2 寿司を食べる江戸の女性を描いた浮世絵歌川国芳 『縞揃女弁慶』[安宅の松] 1844年刊 <東京都立中央図書館>

図2 寿司を食べる江戸の女性を描いた浮世絵歌川国芳 『縞揃女弁慶』[安宅の松] 1844年刊 <東京都立中央図書館>

さて、現代の東京を、改めてこのリサイクルの視点で捉え直してみましょう。すると、私たちが今直面している水質汚濁や廃棄物処理問題、食品ロス問題など、いくつもの解決すべき現代の課題が鮮明に浮かび上がってきます。

江戸の先人たちの知恵から学び、持続可能な未来の社会をどう築いていくか、子どもたちが社会との関わり方を主体的に考え参画へと向かう、最高のきっかけとなるはずです。