- 中学校 地理
<授業研究 地理> 社会的な見方・考え方を育むためのグループワークとスライド作成 ―「中国・四国地方」の実践例―
2025年度 後期号
◆授業研究 地理
社会的な見方・考え方を育むためのグループワークとスライド作成
-「中国・四国地方」の実践例ー
東京都 中野区立中野中学校 主任教諭 齋藤 卓也
1 はじめに
現行の学習指導要領が導入されてから、「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指すさまざまな実践が展開されてきた。使用する教材や学習方法での工夫はもちろんのことであるが、『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説総則編』では「「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の推進」において、留意すべき点の一つとして、下記のように明記されている。
オ 深い学びの鍵として「見方・考え方」を働かせることが重要になること。各教科等の「見方・考え方」は、「どのような視点で物事を捉え、どのような考え方で思考していくのか」というその教科等ならではの物事を捉える視点や考え方である。各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすものであり、教科等の学習と社会をつなぐものであることから、児童生徒が学習や人生において「見方・考え方」を自在に働かせることができるようにすることにこそ、教師の専門性が発揮されることが求められること。(下線部は筆者)
つまり、下線部のように、どのような教材や学習方法を用いても、この「見方・考え方」を働かせて学習することができなければ、社会科で学習する内容を習得することは難しいということになる。本稿では、改めてこの「見方・考え方」を働かせて学習を進めていく実践を紹介したい。
2 指導と学習の流れ
今回は、『社会科 中学生の地理』(以下、教科書)p.186 3部3章2節日本の諸地域「中国・四国地方」での学習での実践を取り上げる。単元指導計画は以下の5時間構成とした。
なお、教科書では、第2時が「交通網の整備と人々の生活の変化」(p.188〜189)、と第3時が「瀬戸内海の海運と工業の発展」(p.190〜191)であり、上記の単元指導計画と一部異なっている。これは中国・四国地方は南四国・瀬戸内・山陰と区分される地域おいて、まず自然環境との結びつきの強い産業が見られることを紹介し、その上で、日本の諸地域の学習における中核テーマとして中国・四国地方では「交通・通信」を設定したためである。
3 指導における流れと工夫
改めて、地理的分野における「見方・考え方」は①位置や分布、②場所、③人間と自然環境との相互依存関係、④空間的相互依存作用、⑤地域の五つに示されている。これらの「見方・考え方」を働かせるために、また実際に働かせることができているかどうかを確認するための工夫を、本時の指導計画と合わせて考えたい。
本時は、流れを下記の通りとして、「中国・四国地方での交通網・通信網の整備は、人々の生活や産業にどのような影響を与えているのだろうか」という節の問い(教科書p.186「2節の問い」)に対して「見方・考え方」を働かせて考えるよう指導内容を工夫した。
そのために、①地図や景観写真を使用する(例:図1~5)、②ICT(学習者用コンピューター)を活用するという2点を意識した。
①の地図や景観写真を使用することについては、知識・技能を活用して思考・判断・表現するために資料を読み取る技能を身につけさせ、発問を通して「見方・考え方」を働かせることを目的とする。本時の導入では図1の景観写真を用いて「この海を渡る橋にはどのような特徴があるか」という発問から、本州四国連絡橋の一つである瀬戸大橋の特徴として、「自動車と列車の両方が通る二層構造になっている」という情報を読み取らせたい。
展開の前半①では瀬戸大橋をはじめとする本州四国連絡橋が整備されたことを説明し、図2の中国・四国地方の高速道路網と所要時間の変化について、「自動車を使って高松市から3時間で移動できる範囲はどのように変化したか、また、その理由として考えられるものは何か」という発問から、自動車を使って高松市から3時間で移動できる範囲が中国地方を中心に広がっていることと、その理由として高速道路や自動車専用道路の数が増えている(交通網が広がっている)こと(①位置や分布)を読み取らせる。このように、学習活動を行っていく上で、「見方・考え方」を働かせていく土台を作ることが肝要である。
「見方・考え方」を働かせて地域的特色を捉える共通認識ができたら、生徒個人でその作業に取り組む。展開の後半②では節の問いに対してより具体的な地域の地理的事象について「見方・考え方」を働かせて考察していく活動を行った(手順は以下の通り)。
① 教科書p.189、193、194、195を4人グループで1人1ページずつ分担する。
② 節の問いである「中国・四国地方での交通網・通信網の整備は、人々の生活や産業にどのような影響を与えているのだろうか」に対する答えとなる文章を、メリットとデメリットに分けてページ内から抜き出す。
③ 抜き出した内容をGoogleスライドの担当箇所へ入力する。
「見方・考え方」を働かせて考察できているかが分かりやすくなるように、③の作業に取り組む際には以下の点を踏まえ、生徒が「見方・考え方」を働かせて考察できているかを可視化しやすくなるように工夫した。
・抜き出した文章のうち、問いに対して重要だと思う部分は色を変える。
・関係する資料(教科書・地図帳のページ数や資料の番号)を明記する。
・地理的事象に対して多角的、多面的な視点から捉えるために「メリット」と「デメリット」の視点に分けて考察する。
・前後のページの内容を踏まえても構わない。
4 授業を実施して
実際に生徒が授業で作成したスライドから、本時のねらいを達成することができたのか検証してみたい。
グループAのメリットについてまとめたスライド①では、生徒Aの図2をもとにした「移動時間が短縮された」という記述や、生徒Bの「東京や札幌など遠く離れた市場にも、鮮度を保ったまま出荷できるようになった」という図3をもとにした記述、どちらも資料をもとに「位置や分布」「空間的相互依存作用」といった見方・考え方を働かせて考察していることができている様子が見られた。
また、デメリットについてまとめたスライド②からは生徒Aの「沿岸部に人口が集中し、内陸部の人口が減少した」という図4をもとにした記述、生徒Dの「過疎化が進んで人口減少や高齢化が深刻な問題になった」という図5をもとにした記述、どちらも交通網の整備によって人口が沿岸部に移動し、内陸部の人口が減少し過疎化していくという「地域」や「場所」といった見方・考え方を働かせていることを読み取ることができる。
一方で、課題となった部分も見られた。上記のグループBの、メリットについてまとめたスライド③では生徒Eや生徒Hの記述のように、資料等と関連づけることができず教科書の文章から読み取る段階で終わってしまい、見方・考え方が十分に働いていないと思われるものも見られた。
このような傾向を招いてしまった要因として考えられることは、学習者用コンピューターを使用することが先行してしまい、諸資料を活用することに十分な時間や意識を向けることができなかったことが原因だと考えられる。これまで学習者用コンピューターを使用する際にも同様の現象が見られることもあったため、使用する際には事前の指示や説明を入念に行い、授業のねらいや生徒へ伝える必要性を改めて実感した。また、グループAスライド②生徒Cのように教科書の中から問いに対する文章を見つけても、全ての文章に対応する資料があったわけではないという場合もあった。これは教師側が事前に教材の分析や準備を徹底しておかなければいけないという反省点となった。
5 実践を振り返って
現行の学習指導要領での「見方・考え方」を働かせて考察を行うことで、地域的特色を具体的に捉えたり、地域の課題に対して主体的に考えたりする姿勢が身につく生徒が多くなってきた。一方で、「見方・考え方」を働かせることが不十分だと、地域的特色を多面的・多角的な視点で考察できなかったり、学習を深めたりすることが難しくなるという課題も見られた。特に、今回の実践でそうした様子が見られた生徒は、他の単元でも同様の課題が見られた。反対に、「見方・考え方」を働かせることができれば、他の地域でも地域的特色を捉えることができる汎用的な資質・能力が身につくことも確認することができた。今後は、地理的分野だけでなく、他の分野でも同様に「見方・考え方」を働かせること、そのための授業の工夫を意識をして日々の授業改善に取り組んでいきたい。










