• 中学校 地理

<やってみよう! 社会科でAL> なりきり電力会社の広報担当者が語る明るい未来

2025年度 後期号

◆やってみよう! 社会科でAL

なりきり電力会社の広報担当者が語る明るい未来

香川大学教育学部附属高松中学校 教諭 髙橋 範久

1 はじめに

令和7年度版『社会科 中学生の地理』(以下、教科書)には、新たにアクティブラーニングに特化した『アクティビティに挑戦』が設けられた。これは生徒が対話を通して学びを深めることをねらいとしている。今回は、p.281〜282『アクティビティに挑戦』「地域に適した再生可能エネルギーを考えよう」を基に、生徒が地形や気候をはじめとする自然環境とその地域に適した再生可能エネルギーによる発電方法は何かを考える授業を提案したい。

2 授業の構成とねらい

生徒がより問題を自分事として捉えられるように授業を以下のように構成する。

3 前時の学習

なぜ再生可能エネルギーによる発電が求められるのか、図1を使って考えさせた。地球温暖化防止は二酸化炭素排出量削減と大きく関係している。島国日本で暮らす私たちにできる対策は何か、社会的事象と自己との関わりを考えさせた。しかしそれだけでは到底問題を解決することはできない。特に火力発電が多い日本においては、再生可能エネルギーによる発電方法を検討する必要がある。持続的に自然エネルギーを活用するには、地形的特徴を考慮しなければならない。どのような地形のもとでどの再生可能エネルギーの活用による発電が適当かを整理していった。

4 本時の学習

前時までに水力や風力、太陽光、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーの特徴を分析し、それらのメリットやデメリットを整理させた。また、これらを利用した発電の拡大を目指す試みが、日本の二酸化炭素排出量削減に大きな可能性を秘めていることを学んだ上で、生徒に次の課題を提示し、その成果を学級内でプレゼンすることを目指す。

・各自が電力会社の広報担当

・4人1組のプロジェクトチームを結成

・ 課題「いずれかの再生可能エネルギーを用いた発電所を全国に新設し、現地の地域住民の納得が得られるプレゼンをせよ」

連なる山々や長く続く海岸線をはじめとする地形など、日本にはさまざまな自然環境が見られる。だからこそ、各種発電所の立地には特徴が見られることに気付かせたい(図2)。

例えば本校の所在地である香川県は、四国山地と中国山地に季節風が遮られるために降水量が少ない瀬戸内の気候である。晴天日数が多く、日射量が豊富で日照時間が長いという地域的特色を生かした太陽光発電を生徒は提案することが予想される。実際、都道府県面積当たりのため池数が全国最多の本県では、ため池の水面に水上太陽光パネルが設置された風景をよく見る(図3)。

発電所新設のような大規模な開発には環境アセスメントが必要である。生徒が選択・判断し、提案した内容がその地域で適当かどうかを、次の視点でシミュレートさせたい。

・生態系や植生等、今ある自然環境や資源に大きな負荷をかけることなく開発でき、かつ有効に利活用できるか(図3)

・地域住民の生活に変化はあってもその後の生活に支障はなく、持続可能的か

・自然災害の発生等に耐え得るか

・送電コスト等、費用対効果が得られるか

さらに、現地で暮らす人々や自然環境に与える影響を考慮すれば、その地域住民の納得も得られなければならない。環境問題を考えて再生可能エネルギーによる発電量を増やそうとする試みは、大局的には善と捉えられることもあろうが、多角的な視点を持てばまた見え方は変わってくる可能性がある。例えば水力発電とダム建設の是非を巡るさまざまな運動がそれである。この電力会社広報担当としてのプレゼンは、発電所の新設について、住民にどのように説明すれば理解してもらえるか考えることが大切となる。なりきりプレゼンは、多角的な視点を持つ一つの機会となるだろう。

5 終わりに

再生可能エネルギーは今後も間違いなく推奨される。脱炭素社会の実現に伴う弊害も視点の一つとして、真に持続可能な取り組みを考えさせたい。未来社会の形成者である生徒が語る未来が、再生可能エネルギーによって“明るく”照らされることを期待する。