- 中学校 地理
<社会科授業のつくり方~「つなぐ」「つなげる」社会科授業~> 教科書を活用した授業のつくり方
2025年度 後期号
◆社会科授業のつくり方~「つなぐ」「つなげる」社会科授業~
教科書を活用した授業のつくり方
玉川大学教職大学院 特任教授、元全国中学校社会科教育研究会会長 髙岡 麻美
1 本連載を始めるに当たって
本号より始まるこの連載を担当する髙岡麻美です。私は、東京都で中学校社会科教員としてのスタートを切り、その後機会をいただいて全国中学校社会科教育研究会などの会長を務めさせていただきました。現在は、教職を目指す学生たちの指導に当たっています。会長を拝命していた期間は、全国の先生方の素晴らしいご実践や研究を拝見し、多くのことを学ばせていただきました。また管理職として若い先生方の育成に携わった経験や現職での経験から、脈々と続いてきた社会科教育の研究を、次世代につないでいく重要性をひしひしと感じています。前号まで「社会科学習 トラの巻」を担当されていた赤坂寅夫先生のメッセージを引き継ぎ、先生方ご自身が社会科を好きになり、子どもたちを笑顔にするお手伝いができればと思います。キーワードは、「つなぐ」「つなげる」。この連載を通じて、全国の先生方とつながっていければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
2 教科書の多様な資料の活用
よく「教科書『を』教える」のか「教科書『で』教える」のか議論されることがあります。先生方は日頃より教科書をどのように活用していらっしゃいますか。若い先生方の中には、「教科書の全部を教えないと不安」「入試の時に生徒が困るのではないか」とおっしゃる方もいます。また「教科書が終わらない」といった悩みも聞かれます。
教科書には、本文のほか、さまざまな資料が載っています。またQRコードもあり、より詳しい資料を参照することもできます。まずは、そのような資料を活用して、社会的な見方・考え方を働かせる発問をすることは、教科書を活用した一つの方法といえるでしょう。
先生自身が本文も資料もうまく活用して、生徒の知的好奇心を刺激していくことが大切です。そこで本稿では、教科書を活用して単元をつなぐ例を紹介します。
3 単元をつなぐ指導の工夫
学習指導要領総則第3の1「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」(4)では、「生徒が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を、計画的に取り入れるように工夫すること。」とあります。現在、課題解決的な学習として、単元の最初に「単元を見通した学習課題」に対する「予想」「仮説」を生徒に立てさせる実践が多く見られます。また単元を通して課題追究し、単元の終わりに「学習課題に対する結論」や「予想の検証」などを考えまとめさせています。さらに学習を振り返って、新たな課題を見いだし、次単元につなげるという学習過程は「見通し」と「振り返り」が重視されていることになります。これは「主体的・対話的で深い学び」の実現のために重要です。
一方、経験の浅い先生方にとっては、「明日の授業準備もままならないのに、単元を見通した指導など難しい」という悩みもあるでしょう。しかし、学習の「見通し」と「振り返り」がなければ、先生自身の「指導と評価の一体化」の実現も難しくなります。
そこで、教科書の章や節の問いを活用し、先生自身も見通しを持てる方法を考えてみましょう。
例えば、『社会科 中学生の歴史』p.63 3章の問いは、「武士による政治が行われたことによって、社会はどのように変化したのだろうか。」とあり、これが「単元を見通した学習課題」です。図
『平治物語絵巻』から古代との違いについて気付いたことを自由に発表させ、本章では時代の転換期が訪れることを予感させることによって生徒の課題意識を醸成することができます。また、p.65の
の問いを活用し、p.52〜53「タイムトラベル④平安時代を眺めてみよう」(図1)とp.64〜65の「タイムトラベル⑤鎌倉時代を眺めてみよう」(図2)とを比較して、古代からどのように社会が変化するか予想するのもよいでしょう。そして、単元の学習を進める中で、1節から3節の問いに沿って武士による政治が行われる推移や影響を考えていきます。
単元のまとめでは、p.102「学習事項の確認」「節の振り返り」で、各事象の関連について考え、3章の学びについて整理させます。そして、p.103「章の振り返り」を活用し、同じ武家政権でも経済活動の高まりによる社会の変化があることなどをつかませ、学習課題に迫らせます。さらに、p.104「③時代の特色を考察しよう」にあるように中世の特色を自分の言葉でまとめさせた後、p.105の第4章扉にある図
『会津藩主参勤交代行列図』を見せ、「中世にはこのように武士が整列していた資料はあっただろうか」と第3章の資料全てを見直しさせます。すると第3章で武士が出てくる資料は戦いを描いたものが多いことが分かり、中世は戦乱の世の中だが、次の時代は同じ武家政権でも違う社会となっていくことが予想されます。こうして資料をみていくなかで、「そのように変化していく理由は何か」と次章への見通しを持たせることができるでしょう。このように教科書にある問いや資料を工夫して組み合わせていくことで、単元と単元をつなぎ、PDCAサイクルをうまく循環させていくことができます。
ポイント
教科書の章や節の問い、資料などを活用し、見通しや振り返りをさせよう。
4 つなぐ、つなげる
これからの予測困難な時代に対応し、持続可能な社会の形成に参画する力を育むために、私たち社会科教師が果たすべき役割は、非常に大きいです。そのために、先生自身が社会的な見方・考え方を働かせて教材を見て、授業の題材を探すことが重要です。「教科書の資料や本文をつなげる」「1単位時間と1単位時間をつなげる」「単元をつなげる」「分野をつなげる」「学校の授業と社会をつなげる」。「つなぐ」「つなげる」その紐帯となる役割を果たすのが、教師の発問であり、日々の授業改善でしょう。でも、それは一人ではなかなか難しいことです。だからこそ、この連載を通じて、共に学んでまいりたいと思います。


