- 中学校 地理
<社会科授業のつくり方~「つなぐ」「つなげる」社会科授業~> 多様な子どもたちを包摂する社会科授業のつくり方
2026年度 後期号
◆社会科授業のつくり方~「つなぐ」「つなげる」社会科授業~
多様な子どもたちを包摂する社会科授業のつくり方
玉川大学教職大学院 特任教授、元全国中学校社会科教育研究会会長 髙岡 麻美
1 はじめに ―多様性の包摂―
令和7年9月25日の教育課程企画特別部会で「次期学習指導要領に向けた基本的な考え方~あらゆる方策を活用し、三位一体で具現化~」が示され、その中の1つに「多様性の包摂」が挙げられました。このことは、「どの学校でも、多様な個性や特性を有する子供が在籍している実態が顕在化」し、「多様性を包摂し、一人一人の意欲を高め、可能性を開花させる教育の実現が喫緊の課題」であることが前提となっています。
図1を見て、先生方のご経験からうなずけるものがあるのではないでしょうか。
2 学習指導要領から
学習指導要領総則「第4節 生徒の発達の支援」「2 特別な配慮を必要とする生徒への指導」には「個々の生徒の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うものとする」と示されています。各教科等においては学習上の困難に応じた指導内容や指導方法の工夫が規定されて、学習指導要領の各教科解説には、それぞれ「配慮事項」として「困難さ」「指導上の工夫の意図」「手立て」の順にいくつかの例が記載されています。例えば中学校学習指導要領解説社会編第3章1(4)には、以下の例があります。
困難さ 「地図等の資料から必要な情報を見付け出したり、読み取ったりすることが困難な場合」
指導上の工夫の意図 「読み取りやすくするため」
手立て 「地図等の情報を拡大したり、見る範囲を限定したりして、掲載されている情報を精選し、視点を明確にする」
地図の読み取りを指示したとき「どこを見ればいいの?」と混乱する生徒がいたら、どうされますか。例えば「拡大」機能のあるデジタル教科書やタブレット端末を活用することが考えられるでしょう。また索引を使って具体的に指示し「範囲を限定」して、焦点化する工夫もあります。上記の 手立て では、そのように記述されています。また、以下の記述もあります。
困難さ 「学習過程における動機付けの場面において学習上の課題を見いだすことが難しい場合」
指導上の工夫の意図 「社会的事象等を読み取りやすくするため」
手立て 「写真などの資料や発問を工夫すること」
例えば、先生方は、教材を提示する際「何が広がっているか」「前の時代と比較してどこが違うか」等社会的な見方・考え方を働かせるような発問をすることが常でしょう。また、具体的なイメージを湧かせるために視聴覚教材を活用することもあるでしょう。さて、これらは、特別な配慮が必要な生徒のみへの指導の工夫でしょうか。前述の 手立て は、全員の生徒へ分かりやすく、深く考えさせる指導の工夫と何ら変わることがないのではないでしょうか。私は、配慮が必要な生徒への手立ては、全ての子どもたちにとって必要な手立てであると考えます。障害の有無にかかわらず、全ての子どもたちにとって学びやすい学習者主体の授業づくりを進めていくことが何より大切です。
ポイント
配慮が必要な生徒への手立ては、全ての子どもたちにとって必要な手立て
3 ユニバーサルデザイン化された授業とは
図2は、令和7年11月25日特別支援教育WG資料6で示された図です。小・中学校に在籍する障害のある子どもたちの学習活動の充実に向けて重層的な指導・支援をイメージしたものですが、一番下の層には「特別な教育的支援を必要とする子供たちも念頭においた学級全体での指導方法の工夫」とあり、「多様性・包摂性を尊重した学習者主体の授業づくり、学級・集団づくり、教室環境の整備等」「こうした対応が全ての子供の学びやすさに繋がるという視点が重要」とされています。これらのことは、「ユニバーサルデザイン化された授業」の重要性が示されていると言えます。日本授業UD学会(2025)では、「授業UDの定義」を「多様な子どもたちが楽しく学び合い『わかる・できる・探究する』ことを目指す通常学級における授業づくり」としています。ユニバーサルデザインの視点でご自身の授業を振り返ってみるのも、1つの方法でしょう。「ユニバーサルデザインの視点を取り入れた学校の教育活動の推進について《小学校及び中学校での取組の事例集》」(平成29年3月東京都教育委員会)を参考に、授業を振り返る際の視点をあげてみます。
焦点化 :授業のねらいをしぼっているか
視覚化・情報伝達の工夫 :視覚支援・聴覚支援でイメージをもたせているか
共有化・参加の促進 :授業形態を工夫し、学び合いを保障しているか
内容の構造化 :授業はある程度パターン化されているか、スモールステップ化されているか
ワークシート・テスト問題等のUD化
例えば、ワークシートが見やすい文字フォントや分かりやすいレイアウト、書き込みやすい記入枠の大きさになっているかなど、生徒の視点に立ってもう一度見直してみることは、全ての子どもたちにとって、意欲的に学ぶきっかけとなります。各教育委員会には、このような「授業づくりチェックシート」もあるので、探してみてください。
4 まとめ
私たちの仕事は、多様な困難さで困っている子どもたちに必要とする教育的支援をすることです。現在、教科書では、全ての子どもたちにとって見やすく分かりやすい色調が工夫されていたり、歴史の教科書には紙面の右端に年表インデックスが設けられたりしているものもあります。また帝国書院のデジタル教科書には、読み上げ機能や総ルビ機能も搭載しています。これらを子どもたちのために積極的に活用するのも1つの方法なので、ぜひ試してみてください。


