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<社会科授業のつくり方~「つなぐ」「つなげる」社会科授業~> 旅行・研修で撮影した写真の教材化のススメ ~見方・考え方を働かせる活用と発問~

2026年度 前期号

◆社会科授業のつくり方~「つなぐ」「つなげる」社会科授業~

旅行・研修で撮影した写真の教材化のススメ

~見方・考え方を働かせる活用と発問~

玉川大学教職大学院 特任教授、元全国中学校社会科教育研究会会長 髙岡 麻美

1 はじめに 

先生方は、長期休業中に旅行に行かれることはあるでしょうか。普段は大変忙しい日々を送っていらっしゃると思いますが、教員は夏休みをはじめ、授業がない期間にややまとまった休暇が取りやすい職業ともいえるでしょう。先生方は、旅行に行った際の写真やその時の思い出、気付きをどのようにまとめていますか。社会科教師たるもの、やはり何らかの教材として活用したいものです。

2 教材化するには 

では、それらの記録をどのように教材化したらよいのでしょうか。昨年12月、東京都の先生方6名にインタビューしたところ、全員が旅行に行った時の記録等を教材として扱ったことがあると回答されました。休業明けの「学期の授業始めの導入として話した」「1時間使い、教材として話した」という先生がほとんどでした。教員の直接体験は、生徒の感性に訴えるものがあるでしょう。プレゼンテーションソフトに自分が撮った写真等を載せ、分かった事実やそれを補足する事実等を説明する、「社会科通信」等を活用して伝えるなど、生徒の実態や授業進度との関連などを考えながら、写真を教材として活用できると思います。

その際大切なことは、単なる思い出報告にしないということです。ただ「ここに行きました」「楽しかったです」という話を聞いて、生徒は興味を持つでしょうか。中にはなかなか旅行に行けない家庭もあるかもしれません。そのような状況があることも踏まえて、社会科教員として一番大切なことは、先生自身が社会的な見方・考え方を働かせて教材化するということです。また、適切な単元で、教材の一部として扱う場合もあるでしょう。その場合も重要なのは、学習指導要領に即しているかです。いくら教員が興味を持ったといっても、学習指導要領に沿っていないものであれば、それは単なる趣味の紹介とされるでしょう。

ポイント

・学習指導要領に即しているかどうか

・社会的な見方・考え方を働かせられるかどうか

3 撮った写真を教材化する 

旅行で撮った写真を生徒に見せて説明することは、簡単にでき、生徒の関心も高まります。その場合はぜひ地図帳を活用しましょう。その場所を空間的に捉えさせることができます。例えば、写真1は私がある場所で撮った写真です。どこだと思いますか? 

授業で使うとしたら、「日本か外国か」「外国だとしたらどんな場所か」「なぜそう考えたのか」と問うていきます。「イスラム教徒のような格好をしている」と気付けば「イスラム教徒が多い場所は?」と問い、「半袖の人が多い」「写真を撮った日付が2月」と気付けば「2月に半袖でいられる場所は?」と地図帳を活用しながら問います。そうすると最初は「西アジアかな」「オーストラリアかな」と言っていた生徒たちは、「雨が降る」「2月に暑い」「イスラム教徒がいる」という情報を組み合わせて、場所を特定できるでしょう。この後、東京と比較した雨温図や世界のイスラム教徒の人口の資料を見せると、生徒は根拠をもって説明することができます。ちなみに写真1はインドネシア・ジャカルタのスカルノ・ハッタ国際空港で撮った写真です。「今住んでいる地域と何か違う」「面白そう」と教師自身が日頃よりアンテナを高く張って、社会的な見方・考え方を働かせる習慣を身に付けておくとよいと思います。

景観写真を教材化する時の工夫として、加賀美・荒井(2018)は、その有効性を「景観写真の読み解きの作業を行うことによって、複合的要素によって構成される景観を解読する能力を高めることができる」としています。一方その限界・制約について「景観写真は、あくまで実際の地域・場所が撮影されたものにすぎず、それを読み解く際には、写真の限界を十分に理解しておく必要がある」としています。また、印象に残りやすい景観写真として「生徒のイメージと大きく異なる景観写真や感性に強く訴えるような景観写真、同世代のくらしを写した景観写真」としています。そのような特徴を教師がよく理解し、生徒に社会的な見方・考え方を働かせる発問を繰り返し、考えさせるとよいでしょう。

また、写真の教材化は地理的分野だけでなく、歴史的分野・公民的分野でも考えてみることができるでしょう。例えば北方領土問題についての授業でも以下のように使うのはどうでしょうか。

写真2は、大阪・関西万博の大屋根リングから見た西宮方面の写真です。夢洲から西宮までは、『中学校社会科地図』(以下、地図帳)p.107で測ると直線距離にして、約8km。一方で、歯舞群島の1つである貝殻島は、納沙布岬からわずか3.7kmしか離れていません。「この写真に見える西宮より近いところに今なおロシアに不法占拠されている北方領土がある」と話すことは、北方領土問題を切実に捉えさせる1つの機会ともなるでしょう。

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4 教師自身が楽しむ 

私は、知らない土地に行く際、現地の人となるべく話すことを心掛けています。特にタクシー運転手の方との会話は、最近のオーバーツーリズムの問題、コロナ禍後の経済の状況など、わずかな乗車時間でも多くの情報を得ることができます。もっとも、現地ガイドさんや運転手さんとの会話は、二次情報ですから、景観写真同様、授業で活用する場合は他の情報と突き合わせて正確を期す必要はあるでしょう。

「先生が行ったことがある世界の地域の写真を見せてくれることもあり、とても興味が湧いた」「さまざまな物事に地域差が見られるというのが面白かった」。これは、学生たちが書いた印象に残っている中学校の社会科授業の思い出の幾つかです。この感想には、「位置や分布」「場所」「人間と自然環境との相互依存関係」といった地理的な見方・考え方が自然な形で表れています。

2025年8月、全国中学校社会科教育研究会(全中社研)の海外巡検として、「古代から現代へ―日本と韓国の大陸交流を考える―」をテーマに日本の対馬から韓国に渡る機会にも恵まれました。その際、プサンから見た対馬の写真を撮影することができました。地図帳p.35〜36に「東アジアと日本の交流の歴史―大陸から見た日本―」が載っています。古代より大陸と日本との交流の窓口である対馬は、プサンから約50km離れています。この海峡を遣唐使、朝鮮通信使たちが渡ってきたと思うと、わくわくしませんか。先生がわくわく、楽しそうにして話すことは、生徒たちを社会科好きにさせること、間違いなしです。

〈参考文献〉加賀美雅弘・荒井正剛編 『景観写真で読み解く地理(東京学芸大学地理学会シリーズⅡ 3)』、古今書院、2018年