• 中学校 地理

<世界地図歩き> 南インドを訪ねて

2026年度 前期号

◆世界地図歩き

南インドを訪ねて

—地図帳とともに世界を歩こう—

2025年6月13日〜21日、取材班はインド南部を訪れた。世界一の人口を誇るインドは多様な文化や歴史、急速な経済発展などトピックにあふれている。実際に訪れることで見えてきた、インドの現状を紹介していく。

地図帳参照ページ→p.41〜44

■にぎやかなインドの街角

2023年、インドの人口は14億を超え、中国を抜いて世界一となった(地図帳の人口は出典年次の関係で世界2位)。インドはどの町を訪れても人であふれ、各都市のマーケット(市場)は特ににぎやかだ。買い物客の話し声、人々をかき分けて進む車のクラクション、屋台から漂うスパイスの香り......常に五感が刺激される(写真①)。特に目を引いたのは屋台で売られる色とりどりのフルーツだ。取材に訪れた6月、インド半島西岸はモンスーンの影響を受け雨季を迎える。高温多湿な環境で成熟したマンゴーやバナナなどのフルーツはうずたかく積まれ、1kg当たり100円前後で量り売りされている(表紙写真)。近年では、インド国内の急速なICT環境の進展により、こうした市場でもQRコード決済が主流となっている様子がうかがえた(本誌前号p.6〜7参照)。

写真①

表紙写真

■南インドのカレー

インドと聞いてカレーを思い浮かべる方も多いのではないだろうか。インドのレストランではチキンやマトン(インドでは一般的にヤギ肉を指す)、魚のほか、野菜を使ったベジタリアンメニューなどカレーメニューが豊富にある。そして、1食1食に使われるスパイスの種類や調合はその時々で異なり、同じチェーン店であっても、その味は作り手次第だそうだ。

特に取材班が訪れたインド南部のカレーは特徴的である(写真②)。ベンガルールのレストランでは、席に着くと、机いっぱいの大きさのバナナの葉がお皿代わりに広げられる。その後、長粒種であるインディカ米のごはんとカレーやスープが並べられた。カレーをごはんにかけ、右手で混ぜながら、人差し指・中指・親指で一口大につかみ、親指で口に押し込むようにして食べるのが南インドスタイルだ。食事が終わると、バナナの葉ごと捨てれば良いのも効率的である。

さらに取材班は、一般家庭のカレー作りも見学した。近所の精肉店でカットしてもらった鶏肉を持ち帰ると、台所で母親が料理を始める(写真③)。鶏肉と玉ねぎ、トマトなどの野菜を炒め、ターメリックやチリパウダー、コリアンダーなどのスパイスを加えてカレーがペースト状になるまで煮込んでいく。パウダー状に挽いた複数のスパイスはオリジナルの調合でストックされ、まさに家庭の味を引き出しているようだ。全粒粉をこねて作ったチャパティを添えると、1時間ほどで食事が完成した(写真④)。子どもたちはおいしそうに食べていて、“お母さん” のカレーが一番というのは万国共通のようである。

写真②

写真③④

インドの娯楽 -映画産業-

インド発の文化として、インド映画は今や世界中で上映される人気コンテンツとなっている。分かりやすいストーリーとダンスを交えたミュージカル調の展開が特徴的なインド映画は、ムンバイが産業の中心として有名であり、アメリカ合衆国のハリウッドにちなみ、ムンバイの旧称ボンベイからボリウッドと呼ばれている。しかしながら、ムンバイにある昔ながらの映画館は思いのほか閑散としており上映数は2本だけであった(写真⑤)。ネット配信の普及により、映画館で映画を見る人が減っているほか、娯楽の多様化で映画が必ずしも人気の中心ではないとのこと。それでも、ハイデラバード郊外にある、広大な映画セットとテーマパークが融合した施設「ラモジ・フィルムシティ」は多くの人でにぎわい、実際に使われた映画セットを前に写真を撮るインドの人々は皆楽しそうであった(写真⑥)。

写真⑤

写真⑥

ICT産業の進展と働き方

インド南部の高原地帯に位置するベンガルールはICT産業が特に集積しており、国内企業だけでなく、欧米や日本など多くの外国企業も拠点を置いている。郊外の拠点にはガラス張りの現代的なビルが立ち並び、市街中心部とは対照的に、広大な土地をゆったりと使っている印象だ。

取材に訪れた航空関連のソフトウェア開発会社も、オフィスは現代的であり、ノートパソコン1つで仕事をしている様子がうかがえた(写真⑦)。ベンガルールには国立の研究施設やICT機器の部品業者なども集まっており、取引のしやすさからここを拠点にしているとのことだ。

写真⑦

〈写真:帝国書院 2025年6月撮影〉

取材後記:インドはどの町も人々の熱気にあふれていた。カメラを向けると気さくにポーズをとる人も多く、外国人が珍しいため頻繁に一緒に写真を撮りたいと声をかけられた。ICT産業の発展など世界に与える影響が大きくなっていることを実感できた一方で、スラムやストリートチルドレンなどインド国内での貧富の格差も体感した。