• 中学校 地理

<帝国書院の日本“社会科”探訪> 北海道の酪農編

2026年度 後期号

◆帝国書院の日本“社会科”探訪

北海道の酪農編

日本で消費される牛乳やバター、チーズの原料の半分以上を生産し、日本の乳製品自給を支える北海道。

2025年7月、記録的な猛暑が続くなかで、取材班3名は北海道の酪農の最新の姿を取材した。

▲北海道取材班の訪問した場所

北海道東部を中心に、酪農の様子のほか自然環境などを取材した。

■広大な農地で行われる放牧酪農と近年の課題 

北海道の乳製品づくりは、酪農の現場から始まる。取材班は早朝、中標津(なかしべつ)町で放牧酪農を営む小規模な家族経営の牧場を訪ねた(①)。中標津町農協管内では、放牧を行う牧場は町内にある150弱の牧場のうち、約4分の1にとどまるそうだ。取材した酪農家の方は、「家族経営では大規模化や機械化には大きな費用がかかるため、現在の小規模な経営を続けている。機械化は進んでいるが、人の手による管理で牛一頭一頭の細かな変化に気付けている(②)。後継者不足といった課題もあるが、地元の小中学生向けに出前授業を実施し、酪農の魅力も精力的に伝えている」と語った。

写真① 放牧酪農の様子

早朝に牛舎で搾乳を終えたあと、広大な敷地で放牧を行っている様子のドローン空撮。牛たちの奥に見える木々は、開拓時代の植民地区画に合わせて整備された「格子状防風林」の一部である。さらに奥には中標津(なかしべつ)町のシンボルでもある「武佐岳(むさだけ)」が見える。

写真② 牛舎での搾乳風景

搾乳機で搾乳している様子。搾られた生乳は、密閉されたパイプラインを通って空気に触れることなく冷却貯蔵タンクに送られる。

一方で、夏でも冷涼とされてきた北海道にも温暖化などの影響が及び、暑さによる牛の熱中症や乳量減少も近年課題となっている。これまで冷房設備が不要だった牛舎にも暑熱対策が求められ、酪農家の負担増加が懸念される。牛と人との距離が近い放牧酪農の現場では、一頭ごとの健康状態を丁寧に見守る姿と、広い大地でのびのびと草を食む牛たちの姿が印象に残った(③)。

写真③ 放牧地で牧草を食べる牛たち

放牧地で牧草を食べている様子。取材班が訪問した昨年7月末は道東が記録的な猛暑に襲われており、早朝にもかかわらず木陰に固まる牛たちも多く、暑さを避けているようだった。

■北海道の食品工業・酪農を支える乳製品工場 

生乳が向かう先、雪印メグミルクなかしべつ工場は乳製品工場であると同時に、北海道東部で生産された生乳を集めて分配する重要な集乳拠点でもある。取材当日も、各酪農家から搾られた生乳が次々と工場内のクーラーステーションへ運び込まれていた(④)。生乳はここから次の行き先へと振り分けられる。搬入量の約3分の2は道内の工場などに運ばれるほか、ほくれん丸で本州へも届けられる。残りの約3分の1は工場でのチーズ生産に使われており、日本の乳製品自給を支えている。工場で働く方々の姿も印象的だった。安心・安全で高品質な乳製品をつくるため、日々の点検作業や業務を一つひとつ丁寧に行う姿勢が徹底されていた(⑤、⑥)。

写真④ 雪印メグミルクなかしべつ工場内のクーラーステーションへ生乳が運び込まれる様子

写真手前にあるのが、北海道東部の酪農家から集められた生乳のタンクローリー。年間約30万トンの生乳がなかしべつ工場に集められる。

写真⑤ チーズ製造工場の様子

なかしべつ工場では「雪印北海道100 さけるチーズ」やプロセスチーズの原料となるナチュラルチーズ、ホエイパウダーを製造している。写真は原料ナチュラルチーズの製造工程。生乳に乳酸菌と乳を固める酵素を加えて脱水・加塩し、圧縮して大きな豆腐のように成型する。

※写真は企業秘密のため一部加工しています。

写真⑥

■北海道と本州を結ぶほくれん丸と流通調整 

検査を終えた生乳を積んだミルクローリーは、釧路港へと向かう。港では、北海道の農畜産物を本州へ輸送する第二ほくれん丸にミルクローリーが次々と乗り込んでいた(⑦)。日々休むことなく搾られる生乳は、需要・供給ともに一年を通して変動するため、需給調整が難しい。ホクレンでは、廃棄を出さないよう日々の天候や需要に応じて供給先の細かな調整を行っているという。取材班は生乳の流通を追い、酪農家、乳業工場、農協、ホクレンなどそれぞれが役割を担いながら、地域一丸となって北海道の酪農を支えていることを実感した。

写真⑦ ミルクローリーが第二ほくれん丸へ乗り込む様子

第二ほくれん丸は、貨物を積んだ荷台やトラックごと輸送する大型船。釧路港~日立港間をほぼ毎日往復運航している。生乳タンクは回送時に丁寧に手洗浄され、衛生管理が徹底されている。