- 中学校 地理
<世界地図歩き> ニュージーランドを訪ねて
2026年度 後期号
◆世界地図歩き
ニュージーランドを訪ねて
—地図帳とともに世界を歩こう—
2025年6月、取材班はニュージーランドを訪れた。ニュージーランドにはどのようなイメージがあるだろうか。羊、ラグビー、留学、そして雄大な自然。 実際に訪れることで見えてきた、ニュージーランドの現状を紹介していく。
地図帳参照ページ→p.77~78
■ニュージーランドの自然
取材班が訪れた6月末は南半球の冬。ウインタースポーツ目当ての旅行者は多いが、観光客は比較的少ない時期であった。真夏日の東京を発って最初の目的地のクインズタウンでは最高気温でも10℃、夜間は氷点下まで冷え込んだ。西岸海洋性気候に属し、一年を通して温暖だが、「一日に四季がある」と表現されるほど一日の寒暖差が激しい。今回の取材でも数分間の激しい突発的な雨が繰り返されるなど、変化に富んだ天候に直面した。人口の75%が集中する北島は、火山活動が活発でなだらかな牧草地が広がる。一方、南島にはサザンアルプス山脈が背骨のように走り、氷河の侵食を受けたフィヨルド(写真①)、広大なカンタベリー平野など、手付かずの大自然が残されている。取材班は「羊とサザンアルプス」の写真(表紙写真、ドローン撮影)を撮影するため、カンタベリー平野を一日中レンタカーで走り回り、その広さを実感した。
写真①
表紙写真
■ニュージーランドの産業
都市部を少しでも離れると、広大な牧場が延々と続く風景に様変わりする。羊ばかりと思いきや、牛もかなり多いように感じる。ニュージーランドの羊の頭数は、かつては国民1人当たり約22頭といわれたが、1982年の約7000万頭をピークに減少を続け、現在は1人当たり約4頭と、統計開始以来の最低水準となっている。その背景は、牛乳や乳製品の海外需要に対応するため、酪農への転換が増えていることや、キウイフルーツ(写真②)やワイン用ブドウなど、高収益な作物への転換などが挙げられる。国内で最も多く飼育されている羊は、肉と毛の両方を生産する兼用種の代表格である「ロムニー種」で、全頭数の半数以上を占めている。肉質が良く食肉用として人気があり、かつ羊毛は太くて丈夫なため、カーペットや毛布の原料として世界的に評価されている。一方、近年はヨーロッパなどへの輸出用として、より高品質な繊維を得るためにアルパカを飼育する農家も増えている(写真③)。アルパカの毛は、羊毛に含まれるラノリンという油脂成分に敏感な人でも使いやすい素材として注目され、普及が進んでいる。なお、ラノリン自体は保湿力に優れた成分として知られ、空港の土産店ではハンドクリームなどの製品として販売されていた。
写真②
写真③
■ニュージーランドの伝統文化
約200年前にイギリス人が入植する前からニュージーランドに先住していたマオリは、ポリネシア東部からカヌーで約800年から1200年ほど前にニュージーランドに上陸したといわれている。今でも人口の約18%を占め、幼児教育から高校教育のさまざまな場面で、マオリ語や文化についての教育プログラムが取り入れられている。マオリ語は1987年に成立した法律で公用語の一つとなり、取材中もマオリ語と英語が併記されている交通標識が多く見られた(写真④)。
写真④
■ニュージーランドの環境政策
総発電量に占める再生可能エネルギーの割合が約85%に達するクリーンエネルギー先進国である。南島を中心に豊富な水資源と急峻な地形を活用した水力発電のほか、北島の火山活動を利用した地熱発電に加え、年間を通して偏西風が安定して吹く地方を中心に、風力発電が拡大している(写真⑤)。ニュージーランドでは、マオリの伝統的な「自分たちは自然の一部」という精神が背景にあり、環境保全に対する意識が高いのではないかと現地ガイドが語ってくれた。取材班は、地熱発電所が多く点在する北島のタウポ近郊で、先住民マオリの事業体「トゥアロパキ・トラスト」と合弁会社「HalcyonPower」を設立した大林組を取材した(写真⑥)。地熱発電を利用して、製造工程においても二酸化炭素を排出せずにつくられた水素は「グリーン水素」と呼ばれる。水素を燃料とする自動車の研究開発、さらに船舶・航空機燃料としての利用や、水素燃焼でタービンを動かす水素燃焼発電にも期待が寄せられており、幅広い領域で実用化に向けて取り組みが進められている。
写真⑤
写真⑥
〈写真:帝国書院 2025年6月撮影〉
取材後記:今回の取材では、雄大かつ厳しい大自然を目の当たりにしながら、先住民マオリの文化を背景にした産業や生活の一端を垣間見ることができた。留学先として根強い人気のニュージーランドは、語学のみならず、自然や環境問題、先住民文化の尊重など、まさに学びの場にふさわしい国であった。








