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教科書では、なぜ日本の産業革命の説明で「工業化」を使っているのですか。「産業革命」と「工業化」は同じ意味なのですか。

 「産業革命」という概念は、19世紀末に登場してきました。その概念は、機械と動力を用いる工場制度の導入により、雇用関係が激変し、その結果として民衆の生活水準が低下し、多くの社会問題が発生したというものでした。この劇的な変化を指して「革命」という言葉が使われました。しかし、1920年代にはこの概念に疑問を持つ声が世界各地の学界ではあがっており、議論が続いていたようです。一方で、日本の歴史学界は、マルクスの唱えた歴史の発展段階を考える「唯物史観」とともに「産業革命」の概念を支持してきました。冷戦が終わり、「唯物史観」の見直しが進むようになってからは、日本の学者の中からも改めてイギリスの「産業革命」の概念を、日本の歴史に当てはめることについて考え直す声が高まってきています。そのため「工業化」という用語のみで工業社会への変化を説明しようとする動きもあり、歴史の学術書では「産業革命」という表記に変わり、「工業化」という表記を使うことも増えてきています。

 こうした背景を受け、弊社では著者とも検討をした結果、「産業革命」という用語自体は使い続けるものの極力少なくし、「工業化」という工業比重の上昇の説明で済むところについては「工業化」と表記することにしています。