• 用語

「洪積台地」という用語を使わなくなったのはなぜですか。

 以前は地質年代を定める場合、化石を通して区分する「更新世」「完新世」と、堆積物を基礎として区分する「洪積世」「沖積世」とが用いられ、ほぼ同一の時代を指すように使われていました。しかし1948年の国際地質学会で、化石によって地質年代を定めるのが最も適当と規定されました。日本では「洪積世」「沖積世」が定着していましたが、地質学者の間では徐々に国際的な規定に合わせる動きが主流となり、今日では「更新世」「完新世」を用いるようになりました。
 こうした動きを受けて、弊社の地図帳や教科書でも、地質年代については平成初期から「更新世」「完新世」などの用語に切りかえるようになりました。しかし地形の用語としては「洪積台地」「沖積平野」という用語が残っており「洪積台地ができたのは更新世」といった記述が混乱を招くとのご意見をいただくようにもなりました。そこで、当時の教科書執筆担当の先生に改めて相談したところ「洪積世」という時代区分が用いられることのなくなった現在においては「洪積台地」は地形学でも使用されなくなっているので、教科書でも「台地」と表記すべきであるとの意見をいただきました。「洪積(diluvial)」とは、本来は「ノアの洪水による」という意味であり、これらの地層がノアの洪水伝説のような天変地異でつくられたという解釈による用語のため、現在はほとんど使用されていません。そのため、地形学の分野でも「洪積台地」の用語は用いられなくなり「最終間氷期とそれ以降に形成された段丘」のことを、単に「台地」とよぶようになりました。以上のような経緯から「洪積台地」の用語を「台地」に変更しました。