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変わる社会科 -地図・地理
 地理学研究の進展や社会の変化などによって、地理教科書の記述も次第に変化してきています。ここでは弊社によく寄せられる質問から、いくつか代表的なものを選んでご紹介いたします。
Q1:「リアス式海岸」が「リアス海岸」と表記されるようになったのはなぜですか?
A. これまで私どもの地図帳・教科書・副教材では,山地や丘陵の谷に海水が浸入してできた,複雑に入り組んだ海岸線を「リアス式海岸」として表記していました。
  この「リアス式海岸」という表記は,昭和30年代から使用されていましたが,近年,地理学や地形学の学術用語としては「リアス海岸」という表記が,より適切な表現であるとされるようになりました。私どもといたしましても,近年の学界等の動向をふまえ,平成20年度用のものから「リアス海岸」に表記を変更いたしました。
  なお,これまでの「リアス式海岸」という表記も誤りではございませんので,ご指導の際はご配慮いただきますよう,お願い申しあげます。
Q2:「イスラム教」が「イスラーム」と表記されるようになったのはなぜですか?
A. 「イスラーム」とは,唯一絶対の神,アッラーにすべてを預託し,服従することを
意味するアラビア語です。いわば,この「イスラーム」という言葉のなかに,この宗教の本質が込められているため,わざわざ「教」という言葉を加える必要がない,という認識が,以前より専門家の間では一般的でした。また,元のアラビア語だけでなく,英語をはじめとする外国語でも,単に「イスラーム」と表記しています。
  近年,高校世界史の教科書においては,「イスラーム」という表記が定着してきたことを受け,私どもの地理教科書でも,平成19年度用のものより「イスラム教」の用語を「イスラーム」にあらためました。同様に,「イスラーム」する人(イスラム教徒)のことを「ムスリム」と表記するようにしました。
  なお,中学校の教科書では学習段階を考慮し,「イスラム教」「イスラム教徒」と表記しています。
Q3:「洪積台地」が「台地」と表記されるようになったのはなぜですか?
A. かつては地質年代を定める場合,化石を指標として区分する「更新世」「完新世」と,堆積物を指標として区分する「洪積世」「沖積世」とが用いられ,ほぼ同一時代を指すように使われていました。しかし,1948年の国際地質学会で,化石による地質年代を定めるのが最も適当と規定されました。日本では「洪積世」「沖積世」が定着しておりましたが,地質学者の間では徐々に国際的な規定に合わせる動きが主流となり,今日では「更新世」「完新世」を用いるようになりました。
  なお,「洪積(diluvial)」とは,本来は「ノアの洪水による」という意味であり,これらの地層がノアの洪水伝説のような天変地異でつくられたという解釈による用語のため,現在はほとんど使用されておりません。
  こうした動きを受けて,地形学の分野でも「洪積台地」の用語は用いられなくなり,「最終間氷期とそれ以降に形成された段丘」のことを,単に「台地」と呼ぶようになりました。
Q4:日本の「工業地帯」と「工業地域」の使い分けはどのようになっていますか?
A. もともと「工業地帯」「工業地域」の名称については,公式に定められたものはありません。「工業地帯」は,戦前から昭和30年代の高度経済成長期までに形成された,「京浜」「阪神」「中京」「北九州」についてのみ用いることが慣例となっており,これらを“四大工業地帯”と称してきました。高度経済成長期以降に形成された工業地については「工業地域」の呼称が付けられ,“瀬戸内工業地域”のように呼びならわされています。
  近年,一般の書籍や統計書においては,工業出荷額が低下してきた「北九州」を除く三つを“三大工業地帯”とする捉え方も広まりつつあります。しかしながら,私どもの教科書では,現時点においては,歴史的な経緯も学習に含めたときに「北九州工業地帯」は今もなお重要である点,近年の自動車工業や電子機械工業の急速な集積から注目を集めている点等を重視し,「北九州」も含め四つの工業地帯という捉え方を
しております。(ただし,“四大工業地帯”という用語は誤解を招きやすいため,掲載いたしておりません。)
Q5:京浜工業地帯の範囲はどのようになっていますか?
A. 帝国書院の教科書では,京浜工業地帯の範囲を「東京都」「神奈川県」「千葉県」「埼玉県」として扱っていますが,これは以下のような考え方によるものです。
  東京湾をとりまく工業地域は,第二次世界大戦前までは東京区部から横浜にかけての地域に限られており,「京浜工業地帯」という名称もそこから付けられました。「京浜工業地帯」は1960年代の高度成長期にめざましく拡大し,上記の地域を核として,東京湾沿いには千葉県の君津や神奈川県の横須賀あたりまで,内陸部には埼玉県の川口・大宮方面まで広がりました。工業の特色としては,東京都中心部では“印刷・出版”をはじめ,雑貨・衣類・機械などさまざまな業種の中小工場が多く分布しているのに対し,市原・君津や川崎・横浜などの沿岸部では石油化学工業をはじめとする重化学工業が,内陸部では機械工業が発達するなど,地域によって異なります。しかし,工業分布の連続性や,工業地域の発達過程を考えると,これらの地域を連続した一つの地域として捉える方が適切と考え,工業生産額などの統計データは,1都3県の数値を合計して算出しています。
  一方で,京浜工業地帯を「東京都」「神奈川県」だけとみなす区分もみられますが,もともと「工業地帯」の範囲には公式に定められたものがないため,どれが誤りという訳ではありません。しかしながら,さまざまな区分がみられる実態をふまえ,私どもの教科書では,京浜工業地帯に続けて,東京・神奈川と千葉の工業出荷額の内訳を分けて示すよう,配慮しています。
Q6:「楯状地」と「卓状地」はどのように定義されますか?
A. かつては,地帯構造については地形的形態(地表に現れた形態)で分類する考え方が優勢であり,楯状地と卓状地も以下のように定義されていました。
  楯状地…楯を伏せたような形をした台地で,古い岩盤が露出したもの
  卓状地…水平な地層からなる広い台地あるいは高原で,卓上をなし,一般には周囲に急崖をもつもの
  しかしながら,プレートテクトニクス理論が広まってきた頃から,地表の形態だけではなく,地質構造の面から両者を区別する考え方が専門家の間でも一般的になってきました。これにより,私どもの教科書・地図帳でもそうした視点を取り入れた以下のような定義にあらためています。
  楯状地…先カンブリア時代の結晶片岩,花崗岩,片麻岩などが侵食を受けて準平原状になったところ
  卓状地…楯状地の上に古生代以降の地層が水平に堆積したところ
Q7:かつて気温の逓減率は0.55℃というのが通説であったが,帝国書院は0.65℃としている理由は何ですか?
A. 従来の文献などでは,気温の逓減率は0.55℃という数値が多く,地理学辞典などでは0.4〜0.7℃ぐらいまで幅がありました。この違いの原因は,観測されている空気に含まれている水分の量によるものです。従来の0.55℃は,多数の地上実測値から割り出した数値で,一種の経験値といえるものでした。その後,高層気象の観測法が発達し,また対流圏と成層圏の境界付近の高高度を飛ぶ飛行機も多くなったため,ICAO(国際民間航空機関)などが,観測結果と物理学的な法則や実験などの実証的観測結果から導き出した「標準大気」を設定するようになりました。0.65℃は,この標準大気で定められた逓減率です。気象学や気候学でも,標準大気を用いた数値に移項しており,例えば,気温・降水量など気候データの出典として権威ある『理科年表』(国立天文台編集)でも,この「標準大気」データを採用し,高度11qまでの気温変化率は-6.5℃/qと設定しています。
Q8:国の経済規模を示す指標がGNP・GDPからGNIに変わったのはなぜですか?
A. かつては,国の年間経済活動の大きさはGNP(国民総生産)やGDP(国内総生産)で捉えるのが一般的でした。GNPとは,「ある一定期間内(例えば1年間)に生産された財・サービスから,その生産に要した原材料などの中間生産物を差し引いた付加価値の合計」を「国民」という経済活動の枠で捉えたものと定義され,この枠を「国土」で捉えた測度がGDPとなります。これに対し,「ある国民が国内,海外にかかわらず生産した付加価値の総和」をGNI(国民総所得)とよびます。
  かつてGNPに変わってGDPが一般的となった背景には,当時の先進国における経済のグローバル化がありました。先進国は,賃金の安い国へ生産拠点を移し,さらにその製品を国外で販売するケースが多くなったため,経済活動の枠を「国民」で捉えるよりも「国土」で捉えた方が,一国の経済実態を的確に示すことができるようになったからです。その後,経済のグローバル化がさらに進展し,先進国の海外投資が継続するにつれ,国内の「生産」をベースとした経済成長よりも,対外資産から国民が得られる利子や配当などの「所得」をベースとした経済成長の方が,より実態に即した測度として捉えられるようになってきました。このような背景から,国連は1993年にGNIをGDPに変わって経済活動の指標にするよう加盟国に勧告しました(日本は2000年度より移行)。国連の統計書でもGNIが用いられることが一般的になり,もはやGNPについては統計をとっていないのが実情です。
  こうした動きを受け,私どもの地図帳・教科書でも,これまでのGNP・GDPに変わってGNIを用いるようになっています。