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社会科Q & A − 地図・地理
Q1:国名の表記は、何を根拠に決めていますか。
A1.地図帳・教科書に掲載する国名の表記は、以前は外務省所管の財団法人「世界の動き社」が発行した『世界の国一覧表』に従うことが定められていました。この本の国名の表記は、外務省が定める「国名表」に基づいてつくられていましたので、政府が公式に用いる表記でした。
 しかし、『世界の国一覧表』は2007年版を最後に廃刊となり、現行の文部科学省「義務教育諸学校教科用図書検定基準 別表」では、国名の表記について「地名・人名(2)外国の国名の表記は、原則として外務省公表資料等信頼性の高い資料によること。」となっています。現在では、外務省ホームページ「国・地域」に掲載されている国名・首都名が、外務省が用いる公式表記となっています。地図帳・教科書では、基本的にその国名の表記を正式国名として掲載しています。 ※外務省ホームページ「国・地域」 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/
Q2:世界に国(独立国)はいくつありますか。
A2.外務省ホームページ「国・地域」によりますと、日本政府が承認している国家は195か国であり、これに日本を加えた196か国が、日本政府が公式に用いる世界の国の数です。さらに、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は日本政府が国家承認していませんが、国際連合加盟国であることなどもふまえ、検定教科書では世界の国の数に含められています。よって、世界の国は2017年8月現在、合計197か国となります。地図帳・教科書でも、同じく197か国を世界の国の数としています(地図帳p.160「世界の統計」>「世界合計」を参照)。
Q3:中国の地名をカタカナ表記にしているのはなぜですか。
A3.文部科学省「義務教育諸学校教科用図書検定基準 別表」では、外国地名について「地名・人物(3)外国の地名及び人名の表記については、慣用を尊重すること。」とだけ記されており、具体的な表記の基準については記されていません。とはいえ、国語審議会『中国地名・人名の書き方の表』(1949年)、文部省『地名の呼び方と書き方<社会科手びき書>』(1959年)では、「中国・朝鮮の地名は、現代の中国標準音でかな書きにする」と記されています。また、教科書研究センター『新 地名表記の手引き』(1994年)では、「外国の地名は、なるべくその国・地域なりの呼び方によって書く。」「中国・朝鮮の地名は片仮名で書く。ただし、慣用として広く使用されているもの、その他必要のあるものについては、漢字を付記する。」となっています。特に、『新 地名表記の手引き』は地図帳・教科書における地名表記のよりどころとなっており、弊社も本書を参考にしたうえで、現地語に近い読みを研究し、表記を決定しています。ただし、中国における漢字表記は日本人にとってなじみのあるものですので、主要な地名についてはカタカナの後に( )書きで漢字を併記しています。
 ちなみに、中国の首都の「北京」は、現在の中国語(普通話)では「ベイジン」が近い読みとなりますが、中国南方の発音で江戸時代から用いられている「ペキン」という読みが日本では定着しています。外務省でも「ペキン」を用いていますので、地図帳・教科書では「ペキン(北京)」と表記しています。
Q4:緯度・経度の起源は何ですか。なぜ1度=60分なのですか。
A4.紀元前150年頃にプトレマイオスが世界地図上の位置を決定するため、適当な間隔ではなく地球の円周を360度に等分した経緯線を決めました。彼はこの経緯線網を平面に投影するために単円錐図法を考え0度から東経180度、南緯20度から北緯70度までの半球図を作成しました。これが近代地図の基礎となったといわれています。
 ウィルフォードが著した『地図を作った人びと』によると、円を360度としたのは約5000年前のバビロニア人で、その天文学者が「1年は360日」と定義したことに由来しているとしています。また、彼らは月と太陽の動きから60進法を考え出し、すべての計算の基礎としていたようで、これがギリシャの学問に受け継がれ、地図の考えの中に確立していったものと述べております。
Q5:東経・西経はどのようにして決められたのですか。
A5.東経と西経を分けた理由について、正確なところは分かっていません。ただし、一般的に次のようなことがいわれています。
 かつてはそれぞれの国が緯度・経度について独自の表現方法をとっていました。しかし、国際交流がさかんになると、各国の表現がバラバラであることが大変不便になってきたため、どれかの方法に合わせることになりました(1884年「国際子午線会議」)。当時はイギリスが強大な力をもっていたため、発言力の強いイギリスが提唱した「イギリスのグリニッジを通る経線を『本初子午線』とする」ことに各国が同意し、イギリスが採用していた方法に統一することになったといわれています。イギリスが採用していた方法とは、本初子午線を境に東へ180°、西へ180°に分ける方法、つまり「東経」と「西経」でした。このように決められたのは、数が多いより少ない方が使いやすく、東と西をつけることで方向が分かるので便利であることによるといわれています。
 ちなみに、フランスでは、17世紀末からパリ天文台を通過する子午線(パリ子午線)を本初子午線とする経度(パリ経度)が用いられており、国際子午線会議でもパリ子午線を国際的な本初子午線とするよう主張しました。結局イギリスの主張が採択されましたが、フランス国内では20世紀初頭までパリ子午線を基準とする経度が用いられました。現在でも、フランスの一部の地図ではパリ経度が採用されているようです。
 いずれにせよ、当時の世界を制していたイギリスが、自らの国を中心に世界の位置づけを決めていた象徴的な遺産といえます。
Q6:小・中学校地図帳が600mと1400mの等高線を採用しているのはなぜですか。
A6.小・中学校地図帳の日本地図においては、あえて600mと1400mの等高線を採用しています。これに、2000mの等高線も加えて、高さを4段階で大まかにとらえられるようにしています。
 日本で最も標高が高い人口10万以上の都市は松本市で、その標高は610m(気象庁のアメダスの標高)です。つまり、600mの等高線には、これより低いところに人口や様々な産業が多く見られるという意味が込められています。
 一方、標高600~1400mの地域では、都市はあまり多く見られないものの、畑作や果樹栽培などの農業や林業などが営まれており、人々が生活しています。しかし、標高1400mを超えると山林が多くなり、産業がほとんど見られなくなります。1400mの等高線にはこうした意味が込められています。ちなみに、高原野菜で有名な長野県の野辺山原にある野辺山駅の標高は日本で最も高い1345mです。野辺山駅の周辺は広大な野菜の畑が広がっていますが、標高1400mを超えると畑は少なくなり、1500m付近まで上がりますと野菜はほとんどつくられなくなります。
 このように、小・中学校地図帳では、人々のくらしや産業を読み取れるように表現方法を工夫しています。なお、高等学校地図帳では、100m、200m、600m、1000m、1600m、2000m、3000mの等高線を設定し、高校生の地理学習にふさわしい精度で地形の起伏を読み取ることができるように工夫しています。
Q7:小・中学校地図帳が土地利用表現を用いているのはなぜですか。
A7.小・中学校地図帳は、陸高(土地の高低)で色分けする「等高段彩」表現に加え、100万分の1と50万分の1の地図では、田・畑・果樹園・市街地など土地の使われ方で色分けする「土地利用」表現を合わせて用いています。土地利用表現を利用すると、市街地や田畑の広がりを見ることで、学習指導要領で示されている「日本の地域的特色」(人々のくらしや産業のようすなど)を端的にとらえることが可能となります。
 例えば、関東地方の学習をする上で、東京大都市圏のようすを知ることは欠かせません。教科書では「神奈川県や埼玉県、千葉県、茨城県など東京の周辺の県にかけて広がる東京都大都市圏」(p.230)とありますが、地図帳で「東京都とそのまわり」(p.117-118)を見ますと、東京都の市街地が周辺の県まで連続していること、東海道本線・中央本線・東北本線・高崎線などの鉄道路線に沿って広がっていることなどを読み取ることができます。別の例を見てみますと、山梨県の甲府盆地で桃やぶどうなどの果樹栽培がさかんなことを中部地方の学習で扱います。しかし、甲府盆地は平均300m程度と標高が比較的高く、等高段彩表現では果樹栽培のようすを読み取ることができません。土地利用表現であれば、盆地の周縁部の斜面に果樹園が分布していることが、絵記号と合わせて一目で分かります(下図参照)。
 このほかにも、川に沿って水田が分布していることや、静岡県の茶畑や北海道の牧草地の分布のようすなど、土地利用は地域の実態をとらえるのに役立つ表現であると考えています。こうした理由から、地図帳で土地利用表現を採用しています。
 なお、高等学校の地理では、日本は地形を中心に学習します。高等学校地図帳では、それにふさわしい表現として、日本の地図に等高段彩表現を採用しています。
Q8:地図帳の絵記号は、どのような基準で入れているのですか。
A8.地図帳では、主要な農林水産物や工場など、地域の産業にかかわる絵記号を地図中に掲載しています。この絵記号を掲載する基準を決めるにあたり、まず統計を第一のよりどころとしています。例えば、桃の絵記号については、まず農林水産省『果樹生産出荷統計』で県別の収穫量を調査し、100万分の1の地図では1万t以上の県に掲載するのが基準となっています。2010年の場合、福島県・山梨県・長野県・和歌山県が該当します。絵記号の位置にも細心の注意を払っており、その県の中で特に生産がさかんな市町村をさらに詳しく調査し、その位置に置くようにしています。山梨県ですと、山梨市付近に置いています。
 しかし、統計数値だけで一律に掲載するかどうかを判断してしまうと、地域の産業を正確に反映できないことがあります。例えば、岡山県の清水白桃は比較的少数生産ながら、全国的にも高い知名度・ブランド力をほこっており、岡山県の特産品となっています。そのことをふまえ、岡山県の桃の生産量は掲載基準を満たしませんが、倉敷市玉島付近に桃の絵記号を掲載しています。
 このように、弊社では様々な資料を調査し、一つ一つを丁寧に吟味したうえで、地域の最新の実情が見えるよう絵記号を掲載しています。
Q9:「標高」の数値は何を基準にしているのですか。また、「海抜」との違いはありますか。
A9.「標高」とは、基準面から測定したある地点までの垂直距離のことです。日本では東京湾の平均海面を基準面とした高さを標高としています。実際の測定には、東京の永田町にある憲政記念館構内に設けられた日本水準原点の高度を24.3900mとして、これを用いて高さを求めています。一方「海抜」は、近くの海の平均海面からの高さを意味します。そのため、標高と海抜は正確には若干異なりますが、今では同じものとして使われています。
 一般に山や都市の高さは、東京湾の平均海面を基準として測定されるため、「標高」になりますが、一部の離島では周辺の海面からの高さを参考にしているため、これらの地域での高さは厳密には「海抜」になります。しかし、前述の通り両者は同じものとして使われていますので、どちらを使用しても間違いではありません。ただし、「海抜」は「海より抜きん出る」の意もあるため、0m以下の地点を表現する場合、若干不自然になってしまうこともあるかもしれません。
 なお、日本水準原点は、1923年までは24.5000mとされてきましたが、関東大震災による地盤沈下で24.4140mになり、長らくその数値が使用されてきました。ところが、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)によって24mm沈下し、新しく24.3900mと改められた経緯があります。
Q10:「武蔵野」は「武蔵野台地」と表記しないのですか。
A10.かつての地図帳では、「武蔵野台地」「牧ノ原台地」などの表記を用いていました。しかし、昭和59年度版の地図帳から「『原・野』は、その文字自体が台地状の地形という意味をもっているため、語尾に『台地』をつけない」という国土地理院の見解に統一して表記することになりました。
 この際「台地」という語が削除された自然地名は、「武蔵野」「牧ノ原」「三本木原」「那須野原」「相模原」「磐田原」「三方原」「笠野原」の計8か所となります。
Q11:東京都の都庁所在地が「新宿」ではなく「東京」なのはなぜですか。
A11.東京都の「東京都庁の位置を定める条例」では、都庁の位置を「東京都新宿区西新宿二丁目」と定めていますが、これは住所でいう地番としての意味合いが含まれています。しかし、地図帳における都道府県庁所在地は、都道府県の役所が置かれている「都市」としての意味合いが大きいといえます。それでは、新宿区は都市ではないのでしょうか。これを確かめるために、東京都と東京23区が誕生した歴史的背景を振り返ってみましょう。
 現在の東京23区の範囲には、かつて東京市という自治体がありましたが、1943年に東京府と東京市が合併して東京都になりました(東京都制施行)。この際、東京都の内部機関として35区が設置されました。その後23となった東京の区はほかの政令指定都市の区と異なり、区長が選挙で選ばれたり、区教育委員会・区立小中学校があったりと、市町村の機能の一部をもっています。そのため、東京23区は「特別区」とよばれています。一方、東京市がもっていた市町村としての主要な権限(上下水道の設置管理、消防等に関する権限、法人税・固定資産税の徴収権など)は東京都がもつことになりました。また、東京都知事は「東京都の知事」であると同時に「東京23区全体の市長」としての権限ももっています。こうした理由から、新宿区をはじめとする東京23区は、各区が単独で市町村と同格にはなりません。
 このような経緯や背景もふまえて地図帳では、国土地理院の地形図(1/20万)なども参考に東京23区をひとまとまりとしてとらえ、慣習的に用いられている「東京」の名称で記載するようにしています。このため、仮に今後都庁が移転することがあった場合、移転先が東京23区内であれば、都庁所在地は変わらず「東京」となるものと想定されます。参考までに、国連が『世界人口年鑑』などで公表する「世界の都市人口」の統計でも、東京23区を「東京」という都市として扱っています。
 なお、新宿に移転する前の東京都庁は、東京駅近くの千代田区丸の内三丁目にありました。このときも地図帳では都庁所在地を「東京」としていましたが、「都庁所在地は『千代田』ではないのか」という疑問を感じる人はほとんどいなかったようです。東京では、東京駅・新宿駅・渋谷駅など主要駅の周辺部を一つの地域として考えることがあるためか「都庁が東京駅近くにある=都庁所在地は東京」ととらえていた可能性があります。そのため、「新宿駅近くで新宿区内にある都庁の所在地は新宿ではないのか」とお考えになるのも無理はないことかもしれません。
Q12:三重県は近畿地方なのですか。
A12.教科書で用いられている7地方区分は明治時代に使われるようになったもので、学校教育では1903(明治36)年発行の国定教科書『小學地理』で、公式に取り扱われました。その中で三重県は近畿地方に含まれていますが、その背景には歴史的な経緯があるようです。
 「近畿」とは「畿内とその周辺地域」という意味であるとされており、三重県も京都や奈良に都があった際の圏内だったようです。実際、三重県では関西弁に含まれる方言が使われているなど、生活・文化的な面で近畿地方と深い関係があります。そのため、三重県は7地方区分では近畿地方に含まれます。
 一方で、三重県は北部を中心に、中部地方との結びつきも深い県です。例えば、四日市市など伊勢湾沿いに発達した工業地域は、愛知県の名古屋市を中心とする中京工業地帯に含まれますし、三重県内から名古屋市に通勤・通学する人も少なくありません。そのため、三重県を「中部地方」としてとらえることもあるようであり、三重県を中部地方の管轄とする国の出先機関もあります(例:国土交通省中部地方整備局は、三重・岐阜・静岡・愛知・長野県南部の5県を管轄)。また、三重県を愛知県・岐阜県・静岡県と合わせて「東海地域」として扱うことも多くなっています。
Q13:アマゾン川の長さが以前より長くなったのはなぜですか。
A13.アマゾン川の長さは、最新の統計では6,516kmとなっていますが、かつては6,300kmとされていたこともありました。なぜ長くなることがあるのでしょうか。
 川の長さとは、一言でいうと「河口から源流までの距離」のことです。もちろん一つの川にはいくつもの源流がありますので、河口から最も遠い源流までの距離を測り、その川の長さとしています。日本の川の源流はほぼ正確に調査されているため、川の長さが大きく変わるということはほとんどありません。しかし、アマゾン川はアンデス山脈の奥深くから流れ出し、人跡未踏の熱帯雨林を数千kmも流れているので、どこが河口から最も遠い源流なのかを調査するのは容易なことではありません。そのため、調査が進んで河口からさらに遠い源流が新しく発見されるたびに、川の長さが更新されていくのです。アマゾン川の長さについては今でも議論が続いており、7,000km近い長さであるとの説もあります。新しい源流が発見されて、現在世界最長のナイル川の長さをいずれ追い越すのではないかともいわれています。
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Q14:アメリカ合衆国の自動車生産台数の年ごとの変動が、他国に比べて大きいのはなぜですか。
A14.アメリカ合衆国の自動車産業に最も大きな影響を及ぼす要因は、景気の変動です。1970年代の二度の大幅な生産減少は石油危機(オイルショック)の影響が、1990年前後の生産減少は湾岸危機・湾岸戦争での石油高騰が原因と考えられます。石油危機の影響が特にアメリカ合衆国で大きかったのは、当時アメリカ合衆国で販売されていた自動車は、排気量が非常に大きいものが多かったことが考えられます。それに対して、排気量が小さく安くて性能の良い日本車が台頭してきたのがちょうど1970年代後半であるため、1980年代前半のアメリカ合衆国の台数の低下は、日本車にシェアを奪われていった「貿易摩擦」の影響が大きかったといえます。  以上のような動向に加え、自動車の耐久消費のサイクルがおおよそ8~10年周期であることなど、景気変動の波の上に様々な要因が重なったことから、変動幅が大きく表れているようです。
Q15:アメリカ合衆国の首都は、なぜ「ワシントンD.C.」というのですか。
A15.アメリカ合衆国では独立後、ポトマック川付近に首都を建設することになりました。1790年7月16日に100平方マイル(約259km2)の正方形の首都区域が創設され、その区域の名前はクリストファー・コロンブスにちなんで「コロンビア特別領」とされました。また、その中に首都として置く都市の名前は、初代大統領ジョージ・ワシントンにちなんで「ワシントン市」とされ、コロンビア特別領内の独立した地方自治体でした。しかし1871年、首都区域全体を単一の地方自治体として統括させるため、コロンビア特別領とワシントン市が統合されて「コロンビア特別区(District of Columbia)」が成立しました。コロンビア特別区はどの州にも属さず、連邦政府の直轄地となっています。
 現在でもアメリカ合衆国の首都は、法律上正式には「コロンビア特別区」です。しかし、上記のような経緯から、この都市のことを「ワシントンD.C.」あるいは単に「D.C.」とよぶことが多いようです。そのため、地図帳・教科書では、アメリカ合衆国の首都を「ワシントンD.C.」と表記しています。ちなみに、アメリカ人に単に「ワシントン」とだけいうと、ほとんどの場合北西部の「ワシントン州」のことと考えるようです。
Q16:インドの首都はニューデリーと覚えていましたが、最近はデリーになっています。首都が変わったのですか。
A16.インドの首都については、かつてニューデリーと記載していましたが、外務省が編集協力をしていた『世界の国一覧表』(現在は廃刊、詳細はQ1参照)に合わせ、平成14年からデリーに変更した経緯があります。そもそもインドの首都をニューデリーと記載することに対しては、専門家の間でも疑問視されてきました。連邦直轄地であるデリーは、行政単位としてオールドデリー、ニューデリー、デリーカントンメント(軍管区)の3区域に分かれています。首都機能はニューデリーに集中しているため、かつてニューデリーを首都としてきた背景があります。しかし、都市の体をなさない政府機関の集まっている地区をあたかも一つの都市のように扱うことが問題視されていました。現在ではインド憲法に「インドの首都はデリーに置く」と明記されていること、デリー首都圏地域法(National Capital of Delhi Act)でもデリーという表記を用いていることを根拠に、デリーを首都として記載しています。
 外務省ホームページの「国・地域」ではインドの首都をニューデリーとしていますが、ニューデリー地区に首都があるという意味でこれも間違いとはいえず、首都というもののとらえ方の違いといえます。
Q17:ロシアはヨーロッパ州ですか、アジア州ですか。
A17.ユーラシア大陸は、ウラル山脈を境にしてヨーロッパ州とアジア州に分けられます(地図帳p.19-20、教科書p.3⑤「六つの州に分けられる世界」などを参照)。ロシアはウラル山脈をはさんで東西に広がっていますので、ロシアの領土はヨーロッパ州とアジア州にまたがっている、ということになります。ロシアのヨーロッパ州に属する地域をヨーロッパロシア、アジア州に属する地域をシベリア、極東ロシアとして区分することもあります。
 とはいえ、国連の地域区分によると、一つの国家としてのロシアはヨーロッパに分類されています。その理由としては、政治の中心である首都モスクワがヨーロッパロシアにあることが挙げられます。また、おもにヨーロッパロシアに住むスラブ系白人のロシア人が人口の8割を占めていることなどが考えられます。実際ロシアでは、スラブ語派のロシア語が公用語として話され、ロシア正教が広く信仰されるなど、ヨーロッパの文化が広く浸透しています。そのため、地図帳p.159「世界の統計」でも、国連の地域区分に基づき、ロシアをヨーロッパの一国として扱っています。
Q18:カリマンタン島とボルネオ島、2つの名前があるのはなぜですか。
A19.世界の島で第3位の面積(73.7万km2)を擁するカリマンタン(ボルネオ)島は、北部をマレーシア(サバ州・サラワク州)とブルネイ、南部を東・西・南・中カリマンタンの4州で構成されるインドネシアが領有しています。
 古くは先住民を追いやるかたちでマレー人が進出し、その後中国人やインド人による植民地建設が始まりました。7~8世紀の唐代ごろから「渤泥(ブルネイ、ボッデイ)」とよばれて中国で広く知れわたり、10世紀ごろには島の北部にブルネイ王国が成立していました。15世紀ごろ明代の中国では「婆羅」と表記されていたようです。16世紀に入ってポルトガル・スペイン、17世紀初めにオランダ、17世紀末にイギリスが相次いで進出しました。「ボルネオ(Borneo)」の呼称は、このときポルトガル人がつけたといわれており、「ブルネイ」が訛ったものと考えられています。18世紀半ばにイギリスとの抗争で勝利したオランダが一帯を支配(オランダ領東インド)するようになりましたが、19世紀半ばに再びイギリスが島の北部に侵入しました。1891年、オランダ・イギリス両国はボルネオ島における境界線を決め、北部をイギリス領の北ボルネオ・サラワク・ブルネイ、南部をオランダ領のボルネオとする東南アジア支配を確立しました。第二次世界大戦後、インドネシアの独立とともにオランダ領は同国の領有となり、北ボルネオとサラワクはマレーシアに加わりました。
 インドネシアでは、独立と同時に「カリマンタン島」を正式呼称とし、近年日本の外務省も公式に使用しています。一方のマレーシアでは「ボルネオ島」を使っていますが、自国領の部分は州名の「サバ」「サラワク」と呼称することが普通で、インドネシアほど島名にこだわっていません。そのため、地図帳では「カリマンタン」を優先し、「ボルネオ」は別称として併記して扱っています。
Q19:ヒスパニックとはどのような人たちのことですか。
A19.アメリカ合衆国の『2010年国勢調査』の解説を簡単にまとめますと、ヒスパニックとは「ラテンアメリカ出身のスペイン語を話す人々」です。国勢調査では、ヒスパニックは民族として分類されており、「ヨーロッパ系」「アフリカ系」「ネイティブアメリカン」など人種に関する調査項目とは別に、「ヒスパニック/ラテンアメリカ系か」を尋ねる調査項目が設けられています。つまり、ヒスパニックは人種ではないため、ヨーロッパ系のヒスパニックもいれば、アフリカ系のヒスパニックもいるわけです。国勢調査は自己申告によるものですので、ヒスパニックであるかどうかは、個人の判断によるところも多いようです。
 とはいえ、ヒスパニックの人口は2010年には5,000万人を超え、アメリカ合衆国の人種・民族構成を学習するうえで、ヒスパニックがアメリカ合衆国にどのくらいいるのかを理解するのは重要なことといえます。そのため、教科書p.80では、図②の「アメリカ合衆国の人種・民族構成」のグラフの中で、「ヒスパニック」の割合も含めています。このため、このグラフ中の「ヨーロッパ系」「アフリカ系」は、ヒスパニックではない人々の人種構成を指しています。
Q20:「リアス式海岸」が「リアス海岸」と表記されるようになったのはなぜですか。
A20.「リアス(rias)」とは、スペイン語で入り江を意味する「リア(ria)」の複数形です。スペイン北西部のガリシア地方には入り江が多く見られ、「リアスバハス海岸」とよばれています。この「リアス」を由来として、山地や丘陵の谷に海水が浸入してできた入り江が顕著に連なってみられる海岸地形のことを、「rias coast」(英語)というようになりました。この和訳として「リアス式海岸」という表記が昭和30年代以降使用され、定着してきました。しかし、「リアス」そのものが入り江の地形を表す語であるので、あえて「式」を入れる必要はなく、地理学・地形学の学術用語としては「リアス海岸」という表記がより適切であるとされるようになりました。
 地図帳・教科書でも、長らく「リアス式海岸」と表記していましたが、こうした近年の学界等の動向をふまえ、平成20年度用のものから「リアス海岸」に表記を変更しました。なお、これまでの「リアス式海岸」という表記も誤りではございませんので、ご指導の際はご配慮いただきますよう、お願い申しあげます。
Q21:「焼畑」の読みは「やきばた」「やきはた」どちらですか。
A21.森林や草原を焼きはらい、その灰を肥料として作物を栽培する農業を「焼畑農業」といいます(教科書p.93「解説」を参照)。その「焼畑」を、「やきばた」と読む場合と「やきはた」と読む場合があるようです。教科書では「やきばた」としています。これは、地理学の学術用語としては「やきばた」という読み方が定着している他、文部省(当時)発行『学術用語集-地理学編-』でも「yakibata」となっていることなどをふまえております。
 しかしながら、「やきはた」と記載する国語辞典もあり、「やきはた」と読んでも誤りではございませんので、ご指導の際はご配慮いただきますよう、お願い申しあげます。
Q22:日本の「工業地帯」と「工業地域」は、どのように使い分けていますか。
A22.「工業地帯」「工業地域」とは、いずれの名称についても工業の集積が著しいところのことを指します。しかし、その名称について公式に定められたものはなく、両者の使い分けに厳密な基準もありません。工業地域とは工場の分布の多いところ、工業地帯とは工業地域の中でも広範囲にわたって多くの工場が分布し、かつ各種の業種が総合的に発達して相互に関連性がある地域ととらえられます。
 一般的に「工業地帯」は、戦前から昭和30年代の高度経済成長期までに形成された、京浜・阪神・中京・北九州についてのみ用いることが慣例となっており、かつてはこれらを「四大工業地帯」と称してきました。高度経済成長期以降に形成された工業地については「工業地域」の呼称が付けられ、“瀬戸内工業地域”のようによびならわされています。
 近年、一般の書籍や統計書においては、工業出荷額が低下してきた北九州を除く3つを「三大工業地帯」とするとらえ方も広まりつつあります。しかしながら、教科書では現時点において、歴史的な経緯も学習に含めたときに北九州工業地帯は今もなお重要である点、近年の自動車工業や電子機械工業の急速な集積から注目を集めている点等を重視し、北九州も含めて4つの工業地帯というとらえ方をしております(ただし、「四大工業地帯」という用語は誤解を招きやすいため、掲載しておりません)。
Q23:京浜工業地帯の範囲はどこまでですか。
A23.東京湾をとりまく工業地域は、第二次世界大戦前までは東京都区部から横浜にかけての地域に限られており、「京浜工業地帯」という名称もそこから付けられました。「京浜工業地帯」は1960年代の高度経済成長期にめざましく拡大し、上記の地域を核として、東京湾沿いは千葉県の君津市や神奈川県の横須賀市付近まで、内陸部は埼玉県の川口市・大宮市(当時)付近まで広がりました。工業の特色としては、東京都中心部では印刷・出版をはじめ、雑貨・衣類・機械など様々な業種の中小工場が多く分布しているのに対し、市原市・君津市や川崎市・横浜市などの沿岸部では石油化学工業をはじめとする重化学工業が、内陸部では機械工業が発達するなど、地域によって異なります。しかし、工業分布の連続性や、上記のような工業地域の発達過程を見ますと、これらの地域を連続した一つの地域としてとらえる方が適切と考えています。そのため地図帳・教科書では、京浜工業地帯の工業出荷額などの統計データは、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の1都3県の数値を合計して算出しています(千葉県の京葉工業地域は、京浜工業地帯に含まれるものとしています)。
 一方で、京浜工業地帯を東京都・神奈川県だけとみなす区分も見られますが、もともと「工業地帯」の範囲には公式に定められたものがないため、どれが正しくどれが誤りというわけではありません。しかしながら、様々な区分が見られる実態をふまえ、地図帳・教科書では、京浜工業地帯に続けて京葉工業地域(千葉県)の工業出荷額をわけて示すなどの配慮をしています。
 なお、地図帳・教科書で用いている工業地帯・工業地域のわけ方は下記の通りとなります。
 京浜工業地帯=東京都+神奈川県+千葉県+埼玉県(うち京葉工業地域=千葉県)
 阪神工業地帯=大阪府+兵庫県+和歌山県
 中京工業地帯=愛知県+岐阜県+三重県
 北九州工業地帯=福岡県
 瀬戸内工業地域=山口県+広島県+岡山県+愛媛県+香川県
 東海工業地域=静岡県
 北陸工業地域=新潟県+富山県+石川県+福井県
 北関東工業地域=茨城県+栃木県+群馬県
Q24:「IT」という語が出てきますが、最近では「ICT」というのではないでしょうか。両者に違いはありますか。
A24.「IT(Information Technology)」とは「情報技術」のことで、情報処理に関する技術の総称です。明確な定義があるわけではありませんが、おもにコンピュータに関係する技術に関して多用される語となっています。1980年代以降コンピュータの普及が進み、日常生活・業務を問わず電子機器がさまざまな場面で活用されるようになりました。1990年代後半以降は、携帯電話の普及も進み、電子機器が社会や生活のあり方に劇的な変化をもたらし、欠かすことのできないものとなりました。「IT」という語が使われ始めたのはこのころかと考えられます。
 一方、同時にインターネットなどの通信網も整備が進み、多くの人がパソコンや携帯電話でインターネットを活用しています。今日の社会は「高度情報社会」とよばれるほど、情報通信網が世界規模で発展し、現在の情報技術は通信技術と切り離すことができないほど密接に結びついています。そのため、近年では情報技術と通信技術を合わせて「情報通信技術」つまり「ICT(Information and Communication Technology)」という語を用いるようにもなったようです。しかし、両者は通信技術が含まれていることを強調するかどうかの違いであって、電子機器に関わる技術であるという意味においては、大きな違いはないようです。国の機関でも、総務省では「ICT」、経済産業省では「IT」の語を用いることが多いようですが、意味合いとしては両者とも同じようです。
 教科書では、おもに産業と関連して「情報技術(IT)産業」という語として用いています。用語の用い方につきましては、今後も世の中の動向等をふまえて研究を重ねてまいりたいと考えています。
Q25:「電気機械工業」「精密機械工業」「先端技術産業」の違いは何ですか。
A25.機械工業にはいくつかの種類がありますが、教科書では次のように分類しています。 まず「電気機械工業」とは、冷蔵庫や洗濯機などの家電製品(電気機械器具)、コンピュータや携帯電話(情報通信機械器具)、集積回路(IC)や半導体素子(電子部品・デバイス)などを製造する工業のことを指しています。一方、「精密機械工業」とは、時計やカメラなど微細な部品で構成された精巧な機械を製造する工業のことを指しています。このほかにも、事務機器などを製造する「一般機械工業」、自動車・鉄道車両などを製造する「輸送機械工業」もあります。
 この分類は、経済産業省『工業統計表』の「工業統計調査用産業・品目分類」に基づいていますが、2008年にこの品目分類の改訂が行われました。改訂後には「精密機械」に属していた品目が、ほかの機械品目の中に分割移動することになりました。例えば、同じカメラでも、フィルムカメラは「業務用機械器具」に、デジタルカメラは「情報通信機械器具」となりました。このように精密機械工業という分類は、『工業統計表』上からは消滅してしまいましたが、教科書では、p.219で諏訪盆地の工業で「精密機械工業」について述べています。この地域の学習をする際には、歴史的な経緯もふまえてこの語にふれることが適切であると考えています。
 一方、教科書には「先端技術産業」という語も登場し、「ハイテク産業」ともいうこともあります。これに明確な定義はありませんが、高度な知識と先端的な技術により、新しい産業界の担い手となるべく期待されている産業の総称です。教科書では、コンピュータ関連産業、航空宇宙産業、バイオテクノロジー(p.83など)を事例として本文で取り上げていますが、このほかにも、ファインセラミックスなどの新素材開発なども、先端技術産業に含まれることが多いようです。
Q26:「諸島」「列島」「群島」の違いは何ですか。
A26.これらの区別には明確な「基準」とよべるものはありませんが、「諸島」は2つ以上の島の集団、「列島」は多くの島が列をなして連なっているもの、「群島」はまとまりをもって群がっている島々、とそれぞれの言葉の意味に即して名前が付けられているようです。日本の島名は国土地理院と海上保安庁の海洋情報部(2002年までは水路部)が協議して決定していますが、長年使われてきた慣用によるものが多いようです。ただし、このように明確な基準がないため、名称の変更も起こります。例えば、平成20年の国土地理院の発表で、北方領土の「歯舞諸島」は「歯舞群島」に変更になり、地図帳・教科書でもこれに合わせ表記を変更しています。
 外国の島名については、かつて文部省が作成した『学術用語集-地理学編-』では、英語で諸島は「Islands」、群島は「Archipelago」と定義づけされています。しかしながら、日本語での呼び名はこの欧文表記に合致しないこともあり、弊社の場合、内外のさまざまな地図や資料、文献などの調査に加え、地域の専門家のご意見もふまえ、呼び方を定めています。例えば、インドネシアのスマトラ島からスラウェシ島に至る島々は、世界で最も権威のあるイギリスの『TIMES ATLAS』で「Greater Sunda Islands」と表記されています。しかし、列状に連なる島々ですので、地図帳では「大スンダ諸島」ではなく「大スンダ列島」と表記しています。このように、英語表記のみにとらわれず、これまでの慣用と地形的特色から諸資料をもとに日本語表記を決めています。
 『TIMES ATLAS』の島の表現には、「Islands」「Archipelago」双方を使用していて、固有名詞のみで表記している場合もあります。最近は現地の呼び名をアルファベットで表すようになり、例えば、日本の南西諸島は「Nansei Shoto(Ryukyu Islands)」と表記されています。
Q27:「平野」「平地」「低地」の違いは何ですか。
A27.「平野」とはその名の通り、山地などに対して広く平らな地形のことで、地形学上の学術用語です。平野には、長い間の侵食や風化作用により地表が平坦になったものと、河川や海水の堆積作用により形成されたものとがあり、日本にある平野は後者となります。平野を細かく見ていくと様々な種類があり、扇状地・三角州・台地などが含まれます。
 「平地」とは正式な学術用語ではなく、単に平坦な地表面をもつ地形のことを指すときに用いられることが多いようです。例えば、教科書p.137では、「平野の種類」の項目中で「川や海沿いの平地よりも一段高くなっている土地は台地といいます。」と記述しています。ここでは、平野の中の平坦で(台地より)低い土地という意味で「平地」を用いています。
 一方「低地」とは、周辺部に対して相対的に高度の低い土地を指します。例えば、東京都東部の低地(いわゆるゼロメートル地帯周辺)は、西部の武蔵野や東部の下総台地よりも相対的に高度が低い土地なので、低地ということが多いようです。しかし、平地と同じく厳密な定義があるわけではなく、高度200m以下の土地を表す場合、河川沿いの大規模な低い土地を表す場合、平地や台地に対する用語として用いられる場合など、文脈によって意味合いが変わることもあります。  このように、地形用語は似通った語が多く、また形成要因などもそれぞれ複雑です。教科書におきましても、引き続き正確かつ生徒の皆様にとって分かりやすい表現を研究していきたいと考えております。
Q28:領空の高さはどこまでですか。
A28.領空の高さを知るためには、宇宙空間との関係をふまえる必要があります。1967年に発効した「宇宙条約」では、宇宙空間の領有が禁止されています。よって、地表(領海上は水面)から宇宙空間に至るまでの空間が領空となります。
 では、宇宙空間はどこから始まるのでしょうか。実は、宇宙空間を定義することは領空の上限を定義することになるため、各国の利害関係から明文化された国際条約は存在しません。一般的には「地球の大気圏の外側が宇宙空間」とされますが、どこまでを大気圏とするかもとらえ方によって異なります。例えば、科学的な考え方で大気圏を見ると、対流圏・成層圏・中間圏・熱圏・外気圏に区分されていますが、外気圏までを大気圏と考えると高度1万kmよりも外側が宇宙空間ということになってしまい、宇宙開発上現実的ではありません。
 そのため、1950年代に宇宙開発が始まったときに国際航空連盟という民間団体が、地上から100kmを宇宙空間と大気圏の境界線と定義しました。ここでは詳しく述べませんが、ロケットや人工衛星が地球大気圏を脱出するための軌道速度(宇宙速度)を計算する際に、高度100kmが用いられたとのことです。この境界線は「カーマンライン」とよばれ、現在に至るまで大気圏と宇宙空間との境界線の定義として、様々な分野で活用されています。
 話を戻しますと、領空の高さについても「カーマンライン」が慣習的に用いられ、領土・領海の上空で宇宙空間に至るまでの大気圏、つまり高度100kmまでの空間が領空であるとされています。
Q29:小笠原諸島・沖ノ鳥島・南西諸島の間にある飛び地の公海上では、外国船が漁業を行うことはできますか。
A29.結論からいいますと可能です。「国連海洋法条約」によると、公海上では生物資源保存に関する協力義務を負ったうえで漁獲の自由が認められており、「四国海盆海域」とよばれるこの海域で、外国船が漁業を行うことができます。外国船がこの海域に行くためには、日本の排他的経済水域を通過しなければなりませんが、「国連海洋法条約」によると、排他的経済水域において認められる沿岸国の主権的権利を侵害しない限り、排他的経済水域を自由に航行することができます。ですから、沖大東島と沖ノ鳥島の間の日本の排他的経済水域内や、国際海峡である大隅海峡などを通過して飛び地の公海上に行き、漁業を行っている外国船もいます。
Q30:樺太の南半分と千島列島に着色していない理由は何ですか。
A30.南樺太や千島列島は、一度は日本の領土となった地域ですが、第二次世界大戦後のサンフランシスコ平和条約によって日本が放棄し、ソビエト連邦の施政権下に置かれ、その後ロシア連邦に引き継がれて今に至っています。しかしながら、日本政府の見解では、ソビエト連邦はサンフランシスコ平和条約に調印しておらず、さらに現在まで日本とロシア連邦でその領有についての話し合いが十分にもたれていないとの理由から、帰属未確定地であるとしています。
 このような日本政府の見解を踏まえ、昭和44年に当時の文部省から北方領土、千島列島、南樺太の取り扱いに関する通達がありました。これを受け、昭和46年発行の地図帳・教科書から北方領土は日本の領土として、千島列島と南樺太は帰属未定地として明確に表記するようになりました。具体的には、①宗谷海峡上、②樺太の北緯50°上、③シュムシュ島とカムチャツカ半島の間、④択捉島とウルップ島の間の4か所に国境線を引き、その間の陸地は白地にしています。国土地理院の500万分の1「日本とその周辺」地図上で、「帰属未定地域と他国との境界線」は、上記4か所の線のうち、②と③にあたります。
Q31:地図帳・教科書で扱われている日本の人口統計は、何を出典にしているのですか。
A31.日本の人口統計は大きく分けて、「住民基本台帳人口」と「人口推計」の2種類があります。「住民基本台帳人口」は、各市町村にある住民基本台帳への届け出によって記録されている住民の数であり、毎月末日現在で算出されています。さらに、1月1日現在(平成25年までは3月31日現在)の住民基本台帳人口が、『住民基本台帳人口要覧』(国土地理協会)に集計されて、毎年刊行されています。一方「人口推計」は、総務省統計局が発表するもので、直近の「国勢調査」の人口を基準として、住民基本台帳や外国人登録、戸籍などから、その後の人口増減を毎月1日現在で算出したものです。住民基本台帳人口が日本人人口のみであるのに対して、国勢調査人口及び人口推計には、外国人人口が含まれています。人口推計の経年変化を追う場合は、国勢調査が実施される10月1日の人口を用いることが多いようです。
 地図帳・教科書で日本の人口を取り上げる際は、前者の『住民基本台帳人口要覧』を出典としています。その理由としては、地図帳・教科書では日本全体の人口だけでなく、都道府県・市町村ごとの人口を毎年出す必要があるためです。国勢調査をもとにした推計値よりも、住民票の登録によって確定値として毎年出される統計の方がより実態に近く、使い勝手が良いと判断しています。
 国勢調査及び人口推計を毎年の人口として用いている統計書もありますので、同じ年の人口の数値が教科書と異なる場合があります。例えば、教科書p.152では「日本の人口は約1億2822万(2015年)」としていますが、同じく2015年の国勢調査人口は1億2709万人となります。この差には上記のような事情がありますので、統計資料はその取り方によって数値が異なる場合があるということを、ご指導の際に含めていただければ幸いです。
Q32:教科書で「アジアNIEs」という語が出てこないのはなぜですか。
A32.「NIEs(Newly Industrializing Economies)」とは、「新興工業経済地域」のことで、1960年代後半から急速な経済成長を果たした国・地域のことです。そのうちアジア州に属する韓国・台湾・ホンコン(香港)・シンガポールの4か国・地域のことを「アジアNIEs」といいます。以前は教科書などの出版物や報道などでよく登場した語ですが、最近ではほとんど耳にすることはなくなりました。その理由としては、各国・地域ともすでに工業化・経済発展が進み、「新興の」工業経済地域とはいえなくなっていることが挙げられます。アジアNIEsは、東南アジア諸国連合(ASEAN)や環太平洋経済協力会議(APEC)のような正式な国家間の枠組みではなく、経済協力開発機構(OECD)が便宜上命名した「経済用語」ですので、時代の進展とともに使われなくなるのも、やむを得ないことかもしれません。
 なお、近年の工業化・経済発展がめざましい、ブラジル・ロシア・インド・中国の4か国を合わせて、頭文字を取って「BRICs」とよぶことがあります(近年では南アフリカ共和国を含めて「BRICS」とすることもあります)。BRICsも一時期大きく注目されましたが、アジアNIEsと同じく便宜的な経済用語であるため、この語の使用頻度も落ち着いてきています。教科書におきましても、最新の情勢をふまえて用語の取り扱いをしていきたいと考えております。
Q33:地球温暖化などにより世界の気候区分が変わったと聞きましたが、どうなっているのですか。
A33.『理科年表』掲載及び気象庁発表の気温・降水量などの平年値が、1971~2000年の平均値から1981~2010年の平均値に切り替わりました。これによって、いくつかの都市でケッペンの気候区分が変わりました。おもな都市は次の一覧をご覧ください。
①サンルイス Am(弱い乾季のある熱帯雨林気候) → Aw(サバナ気候)
②ヤンゴン Am(弱い乾季のある熱帯雨林気候) → Aw(サバナ気候)
③アリススプリングス BS(ステップ気候) → BW(砂漠気候)
④タシケント BS(ステップ気候) → Cs(地中海性気候)
⑤カラガンダ BS(ステップ気候) → Df(亜寒帯湿潤気候)
⑥ウルムチ BS(ステップ気候) → Df(亜寒帯湿潤気候)
⑦アテネ Cs(地中海性気候) → BS(ステップ気候)
⑧ペキン Dw(亜寒帯冬季少雨気候) → BS(ステップ気候)
⑨オイミャコン Dw(亜寒帯冬季少雨気候) → Df(亜寒帯湿潤気候)
これに伴い地図帳・教科書では、平成26年度発行のものより、雨温図や統計で扱う都市を変更しました。その都市は以下の通りです。
①地図帳p.12、p.157 乾燥帯:ステップ気候の都市例
アリススプリングスがステップ気候から砂漠気候に変わったため、代わりに同じオーストラリアのカルグーリーに変更
②地図帳p.157 熱帯:熱帯雨林気候の都市例
サンルイスが熱帯雨林気候からサバナ気候に変わったため、代わりにブラジルのマカパに変更
③教科書p.16 乾燥帯:ステップ気候の都市例
カラガンダがステップ気候から亜寒帯湿潤気候に変わったため、代わりにウズベキスタンのサマルカンドに変更
ちなみに、ケッペンの気候区分の基準を日本の都市に当てはめてみますと、1月(または2月)の平均気温が18℃以上になった沖縄県宮古島市などは温帯から熱帯(熱帯雨林気候)に、同じく1月(または2月)の平均気温が-3℃以上になった秋田県鹿角市や岩手県雫石町などは亜寒帯から温帯になるなど、一部の地域で気候区分が変わりました。なお、日本の気候は中学校ではケッペンの気候区分とは異なる区分を採用していますので、地図帳・教科書での変更はありません。
Q34:教科書の「日本の諸地域」における各地域の中核考察は、どのような意図で選んだのですか。
A34.学習指導要領では、日本の諸地域を扱う際に「地域の特色ある事象や事柄を中核として、それを他の事象と有機的に関連付けて地域的特色を追究するようにすること。」が示されています。中核考察(視点)としては、「自然環境」「歴史的背景」「産業」「環境問題や環境保全」「人口や都市・村落」「生活・文化」「他地域との結び付き」が挙げられています。
 教科書の第2部3章「日本の諸地域」では、これら7つの中核考察を下表の通り各地域に設定しました。それぞれの選定理由は、下記の通りです。
学習する地域 中核考察
九州地方 自然環境
中国・四国地方 他地域との結びつき
近畿地方 環境保全
中部地方 産業
関東地方 人口や都市
東北地方 生活・文化
北海道地方 歴史的背景
・九州地方…九州地方では、温暖な気候、火山が多く山がちな地形、石炭による工業の発達などの理由から、「自然環境」が重要な特色であると考えました。
・中国・四国地方…古くから瀬戸内海を中心に水運が発達しているとともに、近畿地方と九州地方を結ぶ交通上重要な地域であること、本州四国連絡橋など交通網の整備による結びつきの変化を追えることなどから、「他地域との結びつき」が重要な特色であると考えました。
・近畿地方…京阪神大都市圏への人口集中と、阪神工業地帯を中心とする工業により環境問題が深刻となった経緯をもつ地域です。そのため、琵琶湖の保全の取り組みをはじめとして環境に配慮した工場の立地など、環境保全への対策が行われていることから、「環境保全」が重要な特色であると考えました。
・中部地方…東海・中央高地・北陸と、地域ごとに自然環境や消費地などによって地域の産業の特色が大きく異なることから、「産業」が重要な特色であると考えました。こうした背景から、3地域を分けて学習できる構成にしています。
・関東地方…広大な関東平野に日本最大の人口を抱える地域で、東京を中心に人・モノ・カネ・情報・産業が集中していることから、「人口や都市」が重要な特色であると考えました。
・東北地方…稲作を中心とした伝統的な生活・文化(祭り・冬の農閑期の地場産業など)が見られることや、農業の近代化や工場進出による生活の変化が大きいことから、「生活・文化」が重要な特色であると考えました。
・北海道地方…札幌への人口・機能の集中などの地理的事象が、北海道開拓及びその前後の歴史(屯田兵・アイヌなど)と大きくかかわっていることから、「歴史的背景」が重要な特色であると考えました。
上記の理由に加え、発達段階にも配慮しています。最初に学習する九州地方は、7つの中核考察の中でも最も基礎となる「自然環境」を学習の導入として設定しています。これ以降の各地方の視点も、発達段階に応じて徐々に高度な視点となるよう配慮しています。
Q35:教科書では「アグリビジネス」「穀物メジャー」「サンベルト」「シリコンバレー」の単語を太ゴシックにしていますが、それはなぜですか。
A35.アメリカ合衆国の産業を学習する際は、「大規模である」ことや「世界に影響を及ぼしている」といった事項を学ぶことになります。その際、「適地適作」や「先端技術産業」といった言葉のみでこの国の産業をとらえると、表面的な理解になりかねず、なぜ、アメリカ合衆国の産業が、これほどまでに世界に影響を及ぼしているのかを学ぶことはできないと考えました。
 そこで、農業においては、単に生産力が高いだけでなく、それを下支えする「穀物メジャー」や「アグリビジネス」の存在についても触れるようにしました。また、工業においては先端技術産業がさかんであるという事実だけでなく、それらの産業がおもにどのような地域でさかんなのか、またなぜそれらの地域でさかんになったのかを記述しています。このように、単に産業がさかんなことを記述するだけでなく、「なぜさかんなのか」までを記述することが、ひいては生徒の皆様の学習意欲を引き出すと考えております。
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