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アメリカ合衆国取材記 2005年
ハリケーンのニュース

2005年8月下旬,カリブ海およびアメリカ合衆国のメキシコ湾岸を,巨大ハリケーン「カタリーナ」が襲いました。特にニューオーリンズの被害は激しく,市域が水面下に沈み,多数の犠牲者・避難民を出しました。このニュースを,弊社アメリカ合衆国取材班も固唾をのんで見守っていました。取材班が想定していたコースが,車でダラスからニューオーリンズ経由でマイアミに至るコースだったからです。

ハリケーンの被害は甚大で,ニューオーリンズ周辺に立ち入ることができないため,急遽コースを変更し,ダラスより内陸を進んでフロリダに至るコースに変更しました。

今回の取材は,アメリカ合衆国の,特に農牧業を中心に取材を行うことを想定していました。コース変更にはなりましたが,その分,テキサス州北部のフィードロット,ミシシッピ川周辺の綿花栽培,そしてフロリダ州の柑橘類栽培と,アメリカ合衆国の特徴的な農牧業を取材の題材を設定できました。2005年9月下旬,台風というあいにくのコンディションの中,私たち取材班4名は成田空港からダラスへと出発しました。


@フィードロットのようす(テキサス州,アマリロ近郊)
フィードロットを訪れる(テキサス州アマリロ近郊)

テキサス州の玄関口であるダラス・フォートワース空港に降り立った取材班はレンタカーを借り,2週間の取材を開始しました。

まず向かったのは,ダラスから北西方向,テキサス州北部の中心都市アマリロです。アマリロ周辺には大規模なフィードロットが多くあり,そのひとつで取材・撮影を行うことができました。取材にあたっては,アマリロに本部があるテキサス肉牛肥育生産者協会にたいへんお世話になりました。

取材地へと向かう途中は,いかにも大平原という風景が広がっています。肉牛の餌となるとうもろこしやソルガムなどの畑,さらに小麦や綿花などの畑が見渡す限り広がっています。乾燥した地域であるため,センターピボットも頻繁に見られました。

取材したフィードロットの広さは85エイカー(34.4ha)で,18,000頭の牛が15人の労働者によって飼われています。テキサス州内はじめ,ミシシッピ州,ルイジアナ州などから子牛を入荷し,120日ほど肥育した後に,毎週行われている市場に出荷します。

牛への給餌は,専用の自動車で行われます。専用自動車の荷台にブルドーザーで直接餌を投入すると,荷台の中にある撹拌装置で餌が混ぜられ,そのまま下の給餌装置から餌が出てくる,というしくみになっていました。荷台の重量などは自動車内のコンピュータで行われるなど,合理化が進んでいる様子を見て取れました。餌は,プレスしたとうもろこし,牧草,ソルガムのほかに,「Salty supplement(粒状の塩)」も混ぜられます。この餌を,1日3回,1頭あたり8ポンド(約3.6kg)ずつ,計25ポンド(約11kg)与えているそうです。

牛の管理はカウボーイが行います。牛に異常がないか,小動物が入り込んでいないか,2人1組となって馬に乗り管理しています。苦労する点は,病気,特に畜舎を持たないこのフィードロットでは,冬季の牛の健康管理に細心の注意を払うとのことでした。

フィードロットを取材した印象は,とにかく全ての規模が大きく,圧倒されたということです。テキサス州北部では,牧畜が基幹産業となっていること,大規模化と合理化が図られているなかでも,人の手間がかかっていることを,実感することができました。

綿花の栽培と加工工場(テネシー州メンフィス周辺)

第2の取材先である綿花畑と綿花加工工場は,ミシシッピ川地域の中心都市メンフィスから北東に1時間半ほど走った,コヴィントンという街の近郊に位置しています。

この畑が含まれるカウンティーでは,約70,000エーカー(約28,000ha)もの綿花畑が広がっています。ミシシッピ川が運んだ土壌と,豊富な水がこの地を綿花の栽培適地にしているそうです。

綿花の刈り取りは,朝早くはできません。握ると水が滴り落ちるほど,朝露が付いているからです。午前10時ほどになると朝露が乾くために,収穫が可能になります。


A綿花の収穫(テネシー州コヴィントン近郊)

収穫は,巨大なコンバインで行われます。高さが5mはあろうかというコンバインは,綿花を枝ごと4列ずつ収穫し,綿部分のみを分離して,圧縮空気で後ろのかごにためていきます。籠がいっぱいになったら,運搬用の車に荷台をひっくり返して綿花を移し,さらに圧縮してから工場に運びます。綿花を移し替える際には綿花が風に舞い飛びます。刈り取り後の畑を見ると,かなり綿が残った状態です,もったいないように思えますが,そこがアメリカ合衆国のスケールの大きさといったところでしょうか。

綿花の加工工場では,圧縮されて運ばれてきた綿花をほぐし,分離器にかけてごみなどを取り除いていきます。すさまじい音が響く中,かちかちにプレスされた出荷用の真っ白な綿が,次々に梱包されていきます。

この工場では,テキサス州南部やメキシコからの出稼ぎ労働者(ヒスパニック) 35名が,1日2交代,12時間労働に従事しています。また,農場でもヒスパニックが収穫作業に従事していました。

柑橘類の栽培と加工工場(フロリダ州ヴェロビーチ)

第3の取材先,フロリダ州ヴェロビーチでは,予期せぬことが待ち受けていました。通常であれば収穫まっただ中の時期なのに,収穫は行われていません。2004年に襲ったハリケーンの影響で,収穫時期が例年より3週間も遅くなっているとのことで,加工工場も操業しておらず,農園でもまだ青々としたグレープフルーツの実が付いているという状態でした。収穫するためには,米国農務省の基準に従って,糖度や酸度を調べ,基準に達しないと収穫を始められないのだそうです。

取材したIMGシトラス社は,主に日本とヨーロッパ向けにグレープフルーツを輸出しています。生食用は全体の50%で,それ以外はジュースにされます。輸送は冷却装置が付いたコンテナ船が一般的で,マイアミやジャクソンビルなどから積み出されます。

農場の管理は,航空写真とGISを組み合わせ,農場に設置されている温度・降水センサーのデータを元に行っているとのことでした。

収穫時は250エーカーに付き5〜6人のグループで収穫に従事します。90%はメキシコ人の出稼ぎ労働者であるとのことです。

取材を終えて

最先端の工業国のイメージが強いアメリカ合衆国の,農牧業を中心に取材をしたわけですが,扱う農産物は異なっても,大規模化,合理化という共通点がありました。こういったことが,アメリカ合衆国における農牧業の国際競争力の源になっている事を実感しました。さらに周辺国からの出稼ぎ労働者を雇うなど,現代アメリカ合衆国農業の現状をよく表しているのではないかと感じました。

ここには掲載できませんでしたが,2週間かけて農業のみならず文化や歴史などを肌で感じて参りました。4432kmを走破した取材の成果は,今後の教科書などの教材でご紹介して参りたいと存じます。